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男性育休は「理想」と「現実」でどう違う? 検索データと1か月の体験から見えたこと

分析レポート 検索データ
ここ数年、「男性育休」がニュースやSNSで取り上げられる機会が増えました。
政府による取得促進や企業の取り組みも進み、社会的な認知は確実に広がっています。
一方で、制度の評価が高いにもかかわらず、実際の取得率はまだ十分とは言えませんが、それはどのような要因があるのでしょうか?

本記事では、Yahoo! JAPANの検索データをもとに人々の興味関心を分析できるツール「DS.INSIGHT」の結果と、私自身が経験した1か月の育休を重ね合わせて、「理想」と「現実」のギャップを考えます。

データが示す「社会的関心」

関心度合をまず図るため「育休」「男性育休」の検索トレンドを見ると、2023年の上半期に検索ボリュームが増えた大きな山がありました。

検索推移
この背景には、同年4月に施行された育児・介護休業法改正があり、一定規模以上の企業に対して男性育休の取得状況を毎年公表する義務が課されました。そこから、社会全体に「育休を取るのは特別なことではない」という雰囲気が広がり始めました。
厚労省pdf:https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000789715.pdf

さらに、検索データを改正前(2021年6月)と直近(2025年8月)で比較すると、共起するキーワードに明確な変化が見られます。
ここで、私と同じ30代男性の「育休」と一緒に検索されたキーワードについて見ていきます。

30代男性の「育休」と一緒に検索されたキーワードTOP15
2021年6月:「ボーナス」「住民税」などの検索から、育休取得は"収入への影響"や"ボーナスのタイミング"を踏まえて検討され、生活を守るために時期を調整する動きが優勢

2025年8月:手当や制度に関する検索が中心で、制度を前提にどう利用するかに関心が移行

上記を比較した差分から得られる示唆として、育休をめぐる社会の関心は「いつ・どうやって取得するのか」から、「制度をどう使いこなすか」へとシフトしていると言えます。

私自身の実体験:30代男性の1か月育休

私は第一子誕生にあわせて1か月の育休を取得したのですが、振り返ってみると、自分の検索履歴は「社会全体の関心」とは少し違った動きをしていました。

・育休開始前(出産前/検索前)
検索例:「育児休業給付金 条件」「育休手当 条件」「パパ育休 10割 いつから」
→ 制度が本当に使えるのか、収入はどうなるのか。強い不安が先行していました。

・育休開始直後(同日)
検索例:「子供が生まれたら 手続き」「出生届」
→ 申請フローや必要書類を理解し、行動に移す段階に。

・育休中(出産後/検索後)
検索例:「学資保険」「育児休業給付金 振込日」
→ 実際に給付金が入るのか、将来の家計をどう設計するかへ関心がシフト。

こうした流れから、「確認、準備 → 制度理解、手続き → 育児」と3段階の行動変化があったと整理できます。

性別による関心の違い

一般的な関心と私自身の検索行動を比較するため、これらのキーワード検索者の性別内訳を並べて比較してみました。

性別割合
ご覧の通り、育休に関するキーワードに関しては女性の割合が高く、男性の検索はまだ限定的です。
つまり「育休を知っている」認知レベルから、「実際に理解して行動に移す」段階に進むには、男性側にまだ大きな伸び代があると考えられます。

関心がどう推移するか

一般的な関心と私個人の違いを比較するため、「育休」を検索した人がその前後で何を検索しているのか、時系列キーワードを見ると、おおよそ以下のように関心の変化があることが予想できます。

「育休」を検索した人の時系列キーワード
私と同じような形で「確認・準備 → 制度理解・手続き → 育児」と関心が移っていく傾向が見えており、
おおよそですが、制度を理解して手続きを終えるまでに1週間から1か月程度を要しているとみられます。

また、上記の検索キーワードを検索意図でグルーピングすると、大きく次の4つに分けられます。

検索意図グルーピング
これは、育休を考える人が直面する典型的なテーマを示しており、それぞれの不安や情報ニーズが異なります。

実際に心理・行動フェーズと重ね合わせてみると、次のように解釈できます。
・育休取得前は、取得できるか・収入は大丈夫かという不安
・取得直後は、申請や条件の理解を最優先に行動
・取得後しばらくたってからは、給付金の受給確認や延長可否と目の前の生活に目が向き始める

つまり、社会的には「育休取得を推進すべき」という理想が語られる一方で、本人は「情報不足の中で迷い、不安を抱えながら調べている」のが現実です。

育休当事者が必要とする支援とは

こうしたギャップを踏まえると、支援のあり方は時間軸ごとに変える必要があります。

・育休取得前
「給付金はいくらもらえるのか」「いつ振り込まれるのか」といったお金や制度の不安が大きい時期。
→ 金額やタイミングを即答できるシミュレーションやFAQを整備し、取得へのハードルを下げることが重要です。

・育休取得直後
実際に制度を使い始めると、「どの書類をどこに出せばいいのか」「上司や人事にどう説明すればいいのか」といった手続き面で迷う場面が増えます。
→ 申請書類のサンプルや、社内調整を助けるテンプレートを提供することで、行動に移しやすくなります。

・育休中
生活が落ち着くと同時に、子育ての悩みや孤独感が出てくる時期です。
→ 先輩パパ・ママの体験談、相談窓口やオンラインコミュニティを通じて「つながり」を感じられる環境を整えることが、安心感を支えます。

最後に

育休を「どう取るか」「どう支えるか」は、これからの社会にとって大きなテーマです。私自身も1か月の育休を経験し、不安や戸惑いを抱えながらも新しい視点を得ることができました。そうした体験を社会全体で支えるためのヒントは、人々がどんな関心を持ち、どう行動しているかを知ることにあります。

このような、個人の経験だけでは見えない動きを捉えるには、社会全体のデータが欠かせません。DS.INSIGHTは、こうした人々の関心の変化をリアルタイムで捉え、例えば、企業や行政が「いま必要とされる支援」を設計するためのヒントをご提供することができます。
※本記事の内容は公開日時点の情報です。
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