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サンダルはなぜ普段履きに?LINEヤフーのデータから「ファッションアイテムが浸透していく背景」を分析してみた

分析レポート 検索データ
[アナリスト:今井 光貴]

皆さん、今年も暑かったですね。
8月5日には群馬県伊勢崎市にて国内統計史上最高気温である41.8℃を記録するなど、年々暑い日が続いています。(参考:【本気で暑いぞ群馬!】群馬県伊勢崎市で国内最高気温の41.8度を記録 : 関東内陸部で40度超続出
そんな中、問題になるのはやはり服装でしょう。これだけ暑いと普段着としてサンダルを履きたくなりませんか?私は今年の夏はサンダルにとてもお世話になりました。中にはビーチサンダルのようなよりカジュアルなアイテムを取り入れている人も見かけるほど、かなり大衆的なファッションアイテムとなっているのではないでしょうか。
ここでふと疑問に思いました。元々海やプールで履かれていたサンダルが、どのように普段着として履かれるようになったのでしょうか?
そこで今回は、元は特定のシーンのみで使用されていたアイテムが普段着として浸透していく理由について、分析していきます。

まず、Yahoo!検索のデータを用いて「サンダル」がどれくらい検索されているか見てみましょう。

サンダルの検索ボリューム推移
こちらを見ると、2022年7月をピークとして徐々に減少していますが、月毎に数万人ほどの検索ボリュームがあることがわかります。
また、毎年7月頃が検索数のピークになっており、本格的に暑くなり出した頃に多くのユーザーが調べ始めることがわかりますね。

次に「サンダル」と検索しているユーザーの性年代の特徴があるかを見てみましょう。

「サンダル」と検索したユーザーの性年代構成比
男女ともに40・50代の検索割合が大きく、中高年に幅広く受け入れられていることがわかります。特に女性の割合がとても多く、10代・70代以上を除いて男性の同年代割合の2倍以上になっています。

多くの人が注目していることがわかりましたが、実際にサンダルの購入数は増加しているのでしょうか?総務省が提供している1世帯当たり年間の品目別支出金額についてのデータから確認してみましょう。

1世帯当たり年間のサンダルに対する支出金額推移
※対象データリンク:総務省 家計調査(家計収支編)

子供用靴・サンダルの項目のみ2023年から2024年でわずかに減少していますが、大人用・子供用問わず2023年までわずかに増加を続けていることがわかります。

次はYahoo!ショッピングにおける購買数の変化を見ていきましょう。実際にサンダルの売り上げは伸びているのでしょうか?

サンダルの売上高推移
カテゴリ別売上高
7月に購買金額が増える傾向は先ほどの検索データによる結果と一致しており、2023年を境に合計売り上げが急増していることがわかります。
また、カテゴリ別に売上高を見ると、5月〜8月においてはレディースのサンダル一項目で前年度同月のサンダル全体売り上げを上回っていることから、レディースファッションにおけるサンダル市場がとても大きいことがわかります。
では、この背景にはどのような要因があるのでしょうか。
考えられる要因としては以下の3点が挙げられます。

1. 気温の上昇による影響
2. 新型コロナウイルスによる影響
3. 普段着として浸透していったことによる影響

それでは、それぞれの要因について詳しく見ていきましょう。

1. 気温の上昇による影響
毎年のように最高気温が更新され、私自身の体感としても年々暑くなっているように思います。こちらの記事にもあるように、多くの人が暑いと感じているようです。
上述の「サンダル」の検索数に関するデータを見ると、毎年夏になると検索ボリュームが増加していることから、サンダルの購買需要も気温の変化に関係していると考えられるでしょう。
そこで、気象庁から提供されているデータを確認してみましょう。

日平均気温の月平均値比較
※対象データリンク:気象庁が公開している東京都における日平均気温の遷移に関するデータ

日最高気温の月平均値が2022年から2023年において7月で+1.3℃、8月なら+1.7℃、9月は+2.3℃上昇していることがわかります。
また、暑さに関する検索数がどのように変化しているかを見ていきましょう。「猛暑 いつまで」と検索した数がどのように推移しているかを確認します。

「猛暑 いつまで」の検索ボリューム推移(月次)
2022年以前と比較した2023年以降の傾向として、7月や9月でも検索ボリュームが高いことがわかります。これより、ユーザーが暑いと感じる季節の長さが変化していることは間違いないでしょう。
これらのことを加味すると、サンダルの購買数を押し上げている要因の一つとして、年々暑くなっていることが挙げられると思います。

2. 新型コロナウイルスによる影響
次の要因として、新型コロナウイルスによる影響が考えられます。緊急事態宣言によって自宅待機を行なっていた2021~2022年においては、多くの人が外出を控えていたため、サンダルなどの購買数が減少していたのは自然なことだと考えられます。加えて、緊急事態宣言解除によって人々の外出が増えたことにより、購買需要が回復したことは一つの要因としてあるでしょう。
しかし、これはサンダル固有の現象である可能性も否定できません。そこで、先ほどの売り上げ増加がサンダル固有のものかどうかを確認してみましょう。通年で使用するものとして、「スニーカー」についても同様に調べてみましょう。

スニーカーの売上高推移(年次)
こちらもサンダルと同様に2023年以降で売り上げが増加していることがわかります。
このことから、新型コロナウイルスに伴う外出需要の回復がサンダル固有のものではなさそうだと考えてよいでしょう。

3. 普段着として浸透していったことによる影響
最後に、普段着として我々の日常に浸透していったことが一因として考えられます。普段着として浸透しているかどうかを明らかにするために、ユーザーがサンダルに対してどのような興味を持っていて、それがどのように変化していったか見ていきましょう。
ここでは、共起キーワードと呼ばれる、特定のキーワード(今回なら「サンダル」)と一緒によく検索されるキーワードを確認することでユーザーの興味を見ていきます。

「サンダル」を検索した際の共起キーワードTop3(前年同月比が100%以上)
2021~2022年においては、特定のブランドに対する検索が目立ちますが、2023年には"リカバリーサンダル"、2024年では"ウーフォス サンダル"や"リカバリーサンダル"、2025年では"サンダル レディース 疲れない"などの履き心地に関する検索がより多くなっていることがわかります。
2022年までは"テバ"や"NIKE"のような洋服ブランドに関する検索が多かったのに対して、2023年以降は"ウーフォス"や"リカバリーサンダル"などの疲れないサンダルに興味を持っていることがわかります。これは、通常のファッションアイテムとしてだけでなく、長時間履くほどにユーザーの日常に浸透し、ユーザーがより利便性を求めるようになったためだと言えるでしょう。
※ウーフォスサンダル:ウーフォス(oofos)とはリカバリーサンダルと呼ばれる、履いているだけで疲労回復効果があるとされているサンダル(公式サイト

ここまでの内容を踏まえると、サンダルが日常のファッションアイテムとして受け入れられた要因は、近年の気温上昇を含む夏の長期化や新型コロナウイルスによる外出需要の回復、それに伴う実用性を重視するユーザーの趣向が変化していったことが合わさった結果だと考えられます。
ファッショントレンドというと、企業戦略としてのトレンド訴求が主たる要因のイメージがありますが、サンダルの例のように新型コロナウイルスや猛暑などの外的要因や社会的な背景が合わさってできるものもあるのではないでしょうか。

いかがでしたでしょうか。
本記事では、近年普段着としても多く見かけるようになったサンダルについてどのような要因によって普及したかについて分析しました。
このように、普段何気なく身につけているファッションアイテムの背景について調べてみると面白いかもしれません。
今年の夏も猛暑が続きましたが、ようやく涼しくなり秋の装いに変わる季節になりましたね。秋冬にも何か傾向が見えたら、また分析してみたいと思います。
この記事が皆様のファッションを楽しくする一助になれば幸いです。
※本記事の内容は公開日時点の情報です。
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