検索キーワード分析の入門
第2回:検索キーワードの基本を知る
ナレッジ
検索データ
[アナリスト:池宮 伸次]
それでは早速、検索キーワード分析の質を高めるためのポイントを学んでいきましょう。
とはいえ、「検索キーワードの分析」と一口に言っても、さまざまな手法や切り口があります。いったい、何から学んでいくのが良いのでしょうか?
検索ランキング分析? 関連検索キーワード? 共起キーワード分析?
いえ、まず最初に取り組むべきは、「検索キーワード」そのものについて理解することです。
私の経験上、分析の質を高めるために重要なのは、「対象となるデータがどのようなルールで収集・集計・蓄積されているか」をきちんと把握しているかどうかです。この理解の有無が、最終的な分析の質に大きく影響します。
とはいえ、実際に分析を進めるなかで、こうした前提情報を把握するのは簡単ではありません。
たとえば「DS.INSIGHT」で提供されている検索キーワードデータは、誰でも簡単に数値を抽出できるため、「そもそも検索キーワードとは何か?」という点を意識する機会が少ないという方も多いでしょう。また、「検索キーワード」というデータは、そもそもかなり特殊な部類に入るため、世の中に出回っている教材も多くありません。
そのため、検索キーワードデータを深く調べたり、得られた分析結果が正しいかどうかを判断すること自体が難しいという課題があります。
そこで本連載では、皆さんの検索キーワード分析の質をより高め、各自が抱える課題を迷わず正しく解決できるようになるためのノウハウやデータの特性をご紹介していきます。
そのスタート地点となるのが、今回のテーマ「検索キーワード」そのものの理解なのです。
言葉で説明するならば、「検索サービスの入力窓に、自らの意志で考えて入力した"調べたい言葉"」といったところでしょう。
何でも自由に入力できるという点が、このデータの大きな強みです。
しかし、世の中では検索キーワードを「あらゆる言葉が詰まったビッグデータ」と誤解しているケースもあります。けれども、実際にはそうではありません。
たとえば、皆さんもこれまでに「明日の天気」や「沖縄 観光 おすすめ」「確定申告」といった言葉を検索窓に入力したことがあるでしょう。
一方で、「今日は暑い」や「あの映画面白かった」といった言葉を、検索窓に入力することはほとんどないはずです。
ここでまず覚えておいていただきたいのは、「検索キーワードは、すべての言葉が含まれているわけではない」という点です。
この前提を踏まえると、検索キーワード分析には「解決しやすい課題」と「解決しにくい課題」が存在することが分かります。まずはその違いを理解することが、適切な分析を行う第一歩です。
検索キーワードが得意とするのは、「関心」や「探索」といった、ユーザーの明確な目的に基づいた行動による言葉です。たとえば、有名人の名前を調べるような検索は典型的な例です。
一方で、「感情」に関する分析には向いていません。
たとえば、ある新商品が「美味しい」と感じている人が多いのか、「まずい」と感じている人が多いのか----そういった感情ベースの評価を検索キーワードから読み取るのは難しいのです。
つまり、ある商品やサービスへの評判やポジネガを分析したい場合は検索キーワードではなく、SNSなどのテキストデータをつかう必要があります。このように、分析を始める前に、抱えている課題を解決するための適切な手段とデータを選択できるか、そこが重要となってきます。
たとえば、皆さんが「2025年の母の日が何月何日か分からない」といった場合、どのように検索するでしょうか?
「母の日」だけ入れる人もいれば「母の日 いつ」「母の日 2025」と入れる人もいるでしょう。人によっては「母の日いつ」と入れる人もいれば「2025 母の日 いつ」と検索する場合もあるでしょうし、「2025年の母の日はいつ?」と文章として入力する人もいるはずです。
このように、検索窓には自由な形式で言葉を入力できるため、同じ意図であっても、表現の仕方には非常に多様性があるのです。
その結果、検索キーワードとして収集されるデータも多種多様となり、一つの意図に対して多数のバリエーションが存在するという、分析において大きな課題が発生します。このような言葉を「揺らぎワード(表記ゆれ)」と呼んだりもします。
つまり、もしあなたが検索キーワードを分析する際に、「他にもさまざまな入力方法があるかもしれない」という視点を持たずに進めてしまうと、実際には検索されていない、あるいは検索者がごく少ないキーワードをベースに分析してしまう可能性があります。
これは、検索キーワード分析において非常によくある失敗の一つです。
そのため、常に「この言い方以外にどんな表現があるか?」という視点を意識することが、正確な分析を行ううえで非常に重要です。
同じ意味を持つ複数の表現、いわゆる揺らぎワード(表記揺れ)を探し出すのは難しいと感じる方も多いかもしれません。
そこで今回は、揺らぎワードを効率的に見つけるためのおすすめの方法を2つご紹介します。
方法①:検索エンジンの入力補助機能を活用する
まずご紹介するのは、もっともシンプルで誰でも今すぐ実践できる方法です。
それは、検索エンジンの「入力補助機能(サジェスト)」を活用することです。
たとえば、検索窓に「母の日」と入力してみてください。すると、その下にさまざまな候補キーワードが表示されるはずです。
これは、実際に多くのユーザーが入力した検索語句をもとに表示されるもので、多くの人が使っているキーワードを把握するのに役立ちます。
このようなキーワードは、検索ボリュームが多い傾向があるため、分析対象としても優先度が高いといえます。
つまり、入力補助に表示されるキーワードを参考にすることで、より実態に即した揺らぎワードの候補を効率的に見つけることができるのです。
このような地道な調査こそが、検索キーワード分析の質を高める第一歩となります。
方法②:「DS.INSIGHT」の「Journey」機能を活用する
「DS.INSIGHT」を利用している方には、「Journey」機能の活用をおすすめします。
この機能は、検索キーワードの時系列での分析ができるだけでなく、あるキーワードを検索した人が、ほかにどんなキーワードを検索しているかという情報も抽出できるのが特長です。
具体的な手順は以下のとおりです。
1. 「DS.INSIGHT」の「Journey」タブを開く
2. 調べたいキーワードを検索窓に入力する
3. 「ランキング」タブを選択し、「特徴度」の降順に並び替える
この操作を行うと、同じ意図を持つと考えられるキーワード(=揺らぎワード)が上位に表示されることが多くあります。
「特徴度」という指標を使えば、関連性の高い言葉を効率的に抽出できるため、手作業では見つけにくいキーワードも漏れなく把握することが可能です。
このように、検索キーワードの揺らぎを意識した事前調査は、分析の正確性や網羅性を高めるうえで極めて重要です。
ぜひ両方の方法を組み合わせながら、分析の精度を高めていきましょう。
10年前と今を比べたとき、検索キーワードの平均文字数は短くなっているでしょうか? それとも長くなっているでしょうか?
答えは......「長く」なっています。
検索エンジンの性能が向上し、入力補助機能も充実した今、キーワードは短くなっていると思った方も多いかもしれません。
しかし実際には、1語のみの検索(シングルキーワード)の割合は年々減少し、2語以上を組み合わせた複合キーワードの比率が増加しています。
つまり、検索ユーザーは年々検索スキルを高め、自分なりのノウハウを蓄積しながら、より具体的かつ目的に沿った検索を行うようになってきているのです。
そしてこの傾向は、今後さらに変化していくと予想されます。
これまで主流だった「〇〇 ××」のような半角スペースでの検索スタイルは徐々に減り、「〇〇の××は?」といった文章形式の検索が今後はさらに増加していくと考えられます。
このように、時代とともに検索キーワードの傾向や使われ方も変化しており、それが検索キーワード分析の結果にも少なからず影響を与えることがあります。
こうした背景すべてを完璧に把握するのは難しいかもしれませんが、少しでも分析の精度を高めるために、今後も有効なノウハウを継続的にお伝えしていければと思います。
• 検索キーワードデータの特性と限界を理解する
• 「揺らぎワード」の存在を意識し、致命的な見落としを防ぐ
• 検索行動の時代的変化を踏まえて分析を行う
これらを意識することで、分析の精度と実用性は大きく向上します。
次回は、検索キーワードのデータを活用したチャート表現の手法についてご紹介します。
どうぞお楽しみに!
第3回:検索数推移グラフの基本を知る
それでは早速、検索キーワード分析の質を高めるためのポイントを学んでいきましょう。
とはいえ、「検索キーワードの分析」と一口に言っても、さまざまな手法や切り口があります。いったい、何から学んでいくのが良いのでしょうか?
検索ランキング分析? 関連検索キーワード? 共起キーワード分析?
いえ、まず最初に取り組むべきは、「検索キーワード」そのものについて理解することです。
検索という世界における独自ルール
質の高い分析を行うために大切なのは、数多くの分析手法を知っていることや、ツールを巧みに使いこなせることではありません。私の経験上、分析の質を高めるために重要なのは、「対象となるデータがどのようなルールで収集・集計・蓄積されているか」をきちんと把握しているかどうかです。この理解の有無が、最終的な分析の質に大きく影響します。
とはいえ、実際に分析を進めるなかで、こうした前提情報を把握するのは簡単ではありません。
たとえば「DS.INSIGHT」で提供されている検索キーワードデータは、誰でも簡単に数値を抽出できるため、「そもそも検索キーワードとは何か?」という点を意識する機会が少ないという方も多いでしょう。また、「検索キーワード」というデータは、そもそもかなり特殊な部類に入るため、世の中に出回っている教材も多くありません。
そのため、検索キーワードデータを深く調べたり、得られた分析結果が正しいかどうかを判断すること自体が難しいという課題があります。
そこで本連載では、皆さんの検索キーワード分析の質をより高め、各自が抱える課題を迷わず正しく解決できるようになるためのノウハウやデータの特性をご紹介していきます。
そのスタート地点となるのが、今回のテーマ「検索キーワード」そのものの理解なのです。
検索キーワードのデータは決して万能ではない
「検索キーワード」とは何でしょうか? 改めて、その本質について考えてみましょう。言葉で説明するならば、「検索サービスの入力窓に、自らの意志で考えて入力した"調べたい言葉"」といったところでしょう。
何でも自由に入力できるという点が、このデータの大きな強みです。
しかし、世の中では検索キーワードを「あらゆる言葉が詰まったビッグデータ」と誤解しているケースもあります。けれども、実際にはそうではありません。
たとえば、皆さんもこれまでに「明日の天気」や「沖縄 観光 おすすめ」「確定申告」といった言葉を検索窓に入力したことがあるでしょう。
一方で、「今日は暑い」や「あの映画面白かった」といった言葉を、検索窓に入力することはほとんどないはずです。
ここでまず覚えておいていただきたいのは、「検索キーワードは、すべての言葉が含まれているわけではない」という点です。
この前提を踏まえると、検索キーワード分析には「解決しやすい課題」と「解決しにくい課題」が存在することが分かります。まずはその違いを理解することが、適切な分析を行う第一歩です。
検索キーワードが得意とするのは、「関心」や「探索」といった、ユーザーの明確な目的に基づいた行動による言葉です。たとえば、有名人の名前を調べるような検索は典型的な例です。
一方で、「感情」に関する分析には向いていません。
たとえば、ある新商品が「美味しい」と感じている人が多いのか、「まずい」と感じている人が多いのか----そういった感情ベースの評価を検索キーワードから読み取るのは難しいのです。
【図1:検索キーワード分析が得意な領域と不得意な領域】
独自の言語体系を持つ検索キーワード
検索キーワード分析が難しいと感じられる要因の一つであり、分析の質にも大きく影響するポイントとして、検索という世界特有の「言葉の使われ方」があります。たとえば、皆さんが「2025年の母の日が何月何日か分からない」といった場合、どのように検索するでしょうか?
「母の日」だけ入れる人もいれば「母の日 いつ」「母の日 2025」と入れる人もいるでしょう。人によっては「母の日いつ」と入れる人もいれば「2025 母の日 いつ」と検索する場合もあるでしょうし、「2025年の母の日はいつ?」と文章として入力する人もいるはずです。
このように、検索窓には自由な形式で言葉を入力できるため、同じ意図であっても、表現の仕方には非常に多様性があるのです。
その結果、検索キーワードとして収集されるデータも多種多様となり、一つの意図に対して多数のバリエーションが存在するという、分析において大きな課題が発生します。このような言葉を「揺らぎワード(表記ゆれ)」と呼んだりもします。
つまり、もしあなたが検索キーワードを分析する際に、「他にもさまざまな入力方法があるかもしれない」という視点を持たずに進めてしまうと、実際には検索されていない、あるいは検索者がごく少ないキーワードをベースに分析してしまう可能性があります。
これは、検索キーワード分析において非常によくある失敗の一つです。
そのため、常に「この言い方以外にどんな表現があるか?」という視点を意識することが、正確な分析を行ううえで非常に重要です。
【図2:揺らぎワードの考慮漏れに注意】
そこで今回は、揺らぎワードを効率的に見つけるためのおすすめの方法を2つご紹介します。
方法①:検索エンジンの入力補助機能を活用する
まずご紹介するのは、もっともシンプルで誰でも今すぐ実践できる方法です。
それは、検索エンジンの「入力補助機能(サジェスト)」を活用することです。
たとえば、検索窓に「母の日」と入力してみてください。すると、その下にさまざまな候補キーワードが表示されるはずです。
これは、実際に多くのユーザーが入力した検索語句をもとに表示されるもので、多くの人が使っているキーワードを把握するのに役立ちます。
このようなキーワードは、検索ボリュームが多い傾向があるため、分析対象としても優先度が高いといえます。
つまり、入力補助に表示されるキーワードを参考にすることで、より実態に即した揺らぎワードの候補を効率的に見つけることができるのです。
このような地道な調査こそが、検索キーワード分析の質を高める第一歩となります。
方法②:「DS.INSIGHT」の「Journey」機能を活用する
「DS.INSIGHT」を利用している方には、「Journey」機能の活用をおすすめします。
この機能は、検索キーワードの時系列での分析ができるだけでなく、あるキーワードを検索した人が、ほかにどんなキーワードを検索しているかという情報も抽出できるのが特長です。
具体的な手順は以下のとおりです。
1. 「DS.INSIGHT」の「Journey」タブを開く
2. 調べたいキーワードを検索窓に入力する
3. 「ランキング」タブを選択し、「特徴度」の降順に並び替える
この操作を行うと、同じ意図を持つと考えられるキーワード(=揺らぎワード)が上位に表示されることが多くあります。
「特徴度」という指標を使えば、関連性の高い言葉を効率的に抽出できるため、手作業では見つけにくいキーワードも漏れなく把握することが可能です。
このように、検索キーワードの揺らぎを意識した事前調査は、分析の正確性や網羅性を高めるうえで極めて重要です。
ぜひ両方の方法を組み合わせながら、分析の精度を高めていきましょう。
検索キーワードって変わらないものなの?
ここで1つ、クイズです。10年前と今を比べたとき、検索キーワードの平均文字数は短くなっているでしょうか? それとも長くなっているでしょうか?
答えは......「長く」なっています。
検索エンジンの性能が向上し、入力補助機能も充実した今、キーワードは短くなっていると思った方も多いかもしれません。
しかし実際には、1語のみの検索(シングルキーワード)の割合は年々減少し、2語以上を組み合わせた複合キーワードの比率が増加しています。
つまり、検索ユーザーは年々検索スキルを高め、自分なりのノウハウを蓄積しながら、より具体的かつ目的に沿った検索を行うようになってきているのです。
そしてこの傾向は、今後さらに変化していくと予想されます。
これまで主流だった「〇〇 ××」のような半角スペースでの検索スタイルは徐々に減り、「〇〇の××は?」といった文章形式の検索が今後はさらに増加していくと考えられます。
このように、時代とともに検索キーワードの傾向や使われ方も変化しており、それが検索キーワード分析の結果にも少なからず影響を与えることがあります。
こうした背景すべてを完璧に把握するのは難しいかもしれませんが、少しでも分析の精度を高めるために、今後も有効なノウハウを継続的にお伝えしていければと思います。
まとめ
検索キーワード分析を行う際には、以下のポイントをしっかり押さえておきましょう。• 検索キーワードデータの特性と限界を理解する
• 「揺らぎワード」の存在を意識し、致命的な見落としを防ぐ
• 検索行動の時代的変化を踏まえて分析を行う
これらを意識することで、分析の精度と実用性は大きく向上します。
次回は、検索キーワードのデータを活用したチャート表現の手法についてご紹介します。
どうぞお楽しみに!
第3回:検索数推移グラフの基本を知る
※本記事の内容は公開日時点の情報です。