導入事例:横浜市
導入事例
横浜市
検索データで戦略的な行政プロモーションを。
新設「横浜市政策局シティプロモーション推進室」が進める解像度の高い分析
横浜市では、データに基づく戦略的な広報・プロモーション等を推進するため、DS.INSIGHTをご活用いただいています。
今回は、今年度より新設されているシティプロモーション推進室広報戦略・プロモーション課所属の関戸 貫生 係長、矢野 敦士 様に、その詳しい取り組み内容についてお伺いしました。
横浜市政策局 シティプロモーション推進室 広報戦略・プロモーション課
関戸 貫生 係長 矢野 敦士 様
新設された専門部署で行政としての発信力を強化
広報戦略・プロモーション課は、今年度(令和4年度)に設置された部署です。
これまで別々の部署で行っていた広報と報道、プロモーションを一元化して、市民の皆様をはじめとする「情報の受け手」の立場に立った「迅速・正確」な情報発信を行うことにより、市政への理解を高めていくことを目的にシティプロモーション推進室が設置されました。
また、その戦略的な広報・プロモーションの手法などを全庁に共有することで、組織的な発信力を高めていくことを大きな目的とし、広報戦略・プロモーション課が設置されました。
具体的な業務内容に触れたいと思います。
自治体職員であれば共感しやすい点かもしれませんが、行政現場は職員の異動が非常に多く、民間とは異なりそれぞれの部署にマーケターやプロモーションの専門職員が常駐することはなかなかありません。
従来、各部署が企画するイベントや施策の広報は、前例踏襲や、一部職員の経験や勘をもとに実施することが多く、誰に向けてどうすれば効果的に伝えられるのかというノウハウがなく、いわゆる5W2Hも設定しないまま進めてしまうケースがよくありました。
こうした状況を変えていくため、広報戦略・プロモーション課がさまざまな手段で各課のプロモーションを支援しています。例えば「自前でチラシを作ったが、デザインや表現方法について意見をくれないだろうか」のような簡単な相談もありますし、初期の組み立ての段階から、私たちが伴走しながら施策を構築していく事例もあります。
職員自身がしっかりとプロモーションの狙いと効果を理解し、説得力を持って進めていくためには、計画の立案段階からエビデンスとなるデータをもとに組み立てる必要があります。DS.INSIGHTという、ウェブ検索のビッグデータの中からエビデンスが得られるツールは、非常に有用で、戦略的な広報・プロモーションに大きく役立っています。
- 部署としてデータの利活用を進めていくとなった背景についてもう少し詳しく伺ってもよろしいですか?
そうですね、横浜市ではプロモーションを構築していくにあたっては、どんな分野にせよ今の情報ニーズを把握するという部分が重要だと考えています。どのようなことに世間の興味や関心が向けられているのかをデータで把握することが、効果的なプロモーションにつながるという意識から、DS.INSIGHTを導入するに至りました。
見せ方を工夫する、注目度の高いキーワード
はい、まずDS.INSIGHTの数ある機能の中で、多用するのがキーワード比較機能です。
同じ意味の異なる表現はたくさんあると思いますが、その検索ボリュームの比較を行ってみて、どのような表現・語句が一般的に多く使われているのかをよく調べています。実際の事例として、記者発表資料や定例会見の資料を作成する所管課から、デザインと併せて表現の仕方をチェックしてもらいたいという相談をよく受けておりますので、その事例をご紹介します。
横浜市記者発表資料における活用事例(横浜市作成)
画面右側の上のものが当初案で、「消防団活動に伴う報告事務等のデジタル化 ~スマホ用アプリの運用を開始します~」という表現が使われていました。
横浜市で記者発表する際は併せてPR TIMESというリリース拡散サービスを活用することが多いため、まずそのキーワードランキングを見たところ、「DX」という言葉が上位に挙がっていました。
「デジタル化」と「DX」という言葉は、厳密には意味が異なりますが、似た使われ方がされていると思います。そこでDS.INSIGHTのキーワード比較を行ってみたところ、「DX」という言葉の検索ボリュームの方が圧倒的に多いということが分かりました。この2つのエビデンスから、「DX」というキーワードを記者発表のタイトルに加えてはどうかと提案しました。
一方、「デジタル化」という言葉は、検索ボリュームでは少ないものの、読み手側にとって理解がしやすい言葉でもありますので、単純に言葉を削ることはせず、文中に残しつつ「DX」を加えることで、波及効果と分かりやすさを両立できるようにしました。
おっしゃる通りです。分析データに基づいて、もちろんDXという言葉は入れつつも、私たちが客観的な視点で見て、より拡散しやすい表現としてこのようなものもあるのではないかと提案し、所管課とともに考え、プロモーションマインドを高めていけるよう工夫しています。
- 他にはどんな事例がございますか?
横浜市のDXの今後の道筋をまとめた「横浜DX戦略」を策定する際に、パブリックコメントを実施しました。これに関して記者発表を行った際にも、タイトルや中身の表現について提案をさせていただきました。
横浜DX戦略の策定について(令和4年9月30日横浜市記者発表資料より抜粋)
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/koho-kocho/press/digital/2022/0928dx-strategy.files/0001_20220930.pdf
「パブリックコメント」の共起キーワード(DS.INSIGHT Peopleより)
パブリックコメントについて(令和4年7月21日横浜市記者発表資料より抜粋)
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/koho-kocho/press/digital/2022/0721dx-strategy.files/0001_20220721.pdf.pdf
関心のつながりから見えてくるターゲット
「栄養」の共起キーワード(DS.INSIGHT Peopleより)
検索の前後に見る対応の方向性
時系列キーワード機能を使う場面が多いです。この機能では、対象となるキーワードと同時検索される言葉だけでなく、前後の時期で検索されている関連キーワードを把握できることで、そのキーワードにたどり着くまでの道筋や関心動向が見える点がとてもよいと思っています。いわば、潜在的なターゲット層を見いだしていくということにつながります。思わぬ切り口からの合致点が見えて面白いなと思っています。
時系列キーワードでの活用事例で言うと、『子育てしやすい街』のプロモーション内容の検討にこの機能を活用しました。横浜市では、小児医療費制度の助成内容拡充に向けて準備を進めているところですが、これを中心としたプロモーションを行う際に、併せてどのような施策をプロモーションすれば相乗効果が得られるのかを検討するため、DS.INSIGHTを用いて子育て世帯のニーズを分析しました。まず初めに、「小児医療費」という言葉がそもそも一般的ではないと感じましたので、別のワードでの調査をするために、キーワード比較機能を用いて別表現の検索ボリュームを比較しました。
検索ボリューム比較(DS.INSIGHT Peopleより)
そして、小児医療費制度と併せてどのような施策をプロモーションするかの検討ですが、「子供 医療費」と検索した方々に、どのようなニーズが他にあるのかを時系列キーワード機能で調査しました。
「子供 医療費」の時系列キーワード(DS.INSIGHT Peopleより)
はい。所管課で具体的な検討を進めているところかと思います。引き続き相談があれば適宜サポートしていきます。
こういったプロモーションは、方向性を定めることに苦慮するところが多いと思いますので、DS.INSIGHTからのデータも含めた根拠に基づいた形で所管課に寄り添うように心がけています。
人を選ばないデータ分析
(矢野さん)
いえ、私はここが2カ所目の部署ですが、以前は区役所内の自治会・町内会やスポーツ振興などを担う部署に属していて、このようなデータ分析や戦略の組み立てはこの部署に来て初めてです。
(関戸さん)
私も矢野と同じくデータ分析はこの部署が初めてとなります。
分析に関して言えば、私も矢野も理系の人間なので、比較的数字の扱いですとかデータ・グラフに対する見方というのは、なじみのある分野なのかなとも思います。加えてDS.INSIGHTはデータを非常に見やすく可視化してくれているので、抵抗感を感じませんでしたね。
経験や勘に頼って組み立てていたプロモーションが、データ分析による根拠づけにより、理論的で、納得感のある内容になってきたというのが大きな変化です。これに伴って、サポートを行った各所管課のプロモーションに対する意識が変わってきたという手ごたえも感じています。
- 最後に、今後のさらなるデータ利活用や展望について伺ってもよろしいでしょうか。
プロモーション手法の組み立てなどにはDS.INSIGHTを活用したサポートを引き続き行っていきます。キーワード比較や共起キーワード、あるいは時系列キーワードを複合的に活用し、あらゆる角度から所管課にアドバイスできるように、より自分たちが分析の進度を深めていくというのが重要だなと思います。
私たちシティプロモーション推進室としては、庁内のプロモーション力・スキルの向上というのがミッションの一つでもあります。庁内職員が当たり前にデータ分析・活用をできるよう、庁内の事例紹介や、活用の具体的なイメージを沸かせるような研修などによって、活用の裾野を広げていくことを考えています。