導入事例:一般社団法人全日本ピアノ指導者協会 | ピティナ
導入事例
一般社団法人全日本ピアノ指導者協会 | ピティナ
全員がDS.INSIGHTユーザー・気軽に分析しかろやかに企画につなぐ
ピティナは1966年に設立され、ピアノ指導者の育成・支援を軸にピアノと音楽教育の振興、環境整備を行う非営利法人。DS.INSIGHTを活用した企画展開について、組織運営室長 堀明久様、事業統括室 渡久地裕様、キャリア支援室 有門真希様にお話しを伺いました。
左から組織運営室長 堀明久様、事業統括室 渡久地裕様、キャリア支援室 有門真希様
コロナ禍で事業収入前年比25%、会費改定をひかえ会員サービスの拡充が課題
- 全日本ピアノ指導者協会様についてお教えください
堀様:ピティナは、約50年の歴史をもつ音楽教育団体です。初代代表が日本人の音楽作品を普及させる動機で発足させ、その後お稽古事として広がりつつあったピアノ教育を主軸として成長してきました。
現在、約1万8千人いる会員の8割はピアノの先生で、残りが生徒の保護者や作曲家、調律師などで構成されています。縁あって、2009年から会長は元ソニー会長の出井伸之氏が務めており、拠点は全国627か所になります。
コンクールなどピアノ学習者を支援する事業や、指導者向けのセミナーやライセンス検定などを実施していて、ステージに立つ子どもの受け皿を広げるのも重要なミッションです。少子化が進行していますが、関連事業も含めて右肩上がりの成長を維持してきました。
しかし、2020年は例外となりました。コロナ禍で収入の主軸であるコンクールがほぼ開催できず、事業収入は前年比25%に。これは、苦境とされる航空などの業界より大きな減少です。昨年は例年行っているコンクールのライブ配信をはじめ、様々な新しいオンラインの取り組みも行いました。今後は徐々に実地のイベントも開催可能になると考えられるので、引き続きオンラインの企画も実施しつつ、例年の規模感でのコンクール実施を目指します。
コロナ禍の影響もあり、2021年より40年ぶりに会費の改定に踏み切りました。厳しい経済情勢も踏まえると会員向けサービスをさらに充実させることが重要な課題となります。
90年代からCDP(カスタマーデータプラットフォーム)を整備、全社員がデータをフル活用
有門様:ピティナではピアノにまつわる様々な事業を展開しており、ピアノ教室の無料紹介サービスやプロの演奏家を派遣して学校内でのコンサート開催、ピアノ曲のWikipediaのような「ピアノ曲事典」など多岐にわたります。
この多様な事業を支えているのがデータです。うちは、データベースを非常に大事にしています。様々なデータがありますが、例えば会員データは98年以降からすべてをひとつのプラットフォーム(Claris FileMaker)で蓄積しています。教室紹介の成立数、コンクールや検定での生徒指導歴、セミナーや交流会への参加歴など会員をサポートするために様々な視点からデータを収集。これらのデータをすべて一人単位で蓄積しています。
さらに、このプラットフォームは全社員アクセス可能で、必要に応じて気軽に分析する文化があります。現在、会員の活性度をはかる指標は50以上あり、さらに担当者が自身の興味や職務に応じて新しく指標を作って取っていく、柔軟なスタイルで活用しています。
これだけ長い年月の蓄積があると、データの有用性も増します。私が注力しているのは若手の指導者育成です。年齢検索をすると、ピティナのステージで育った35歳以下の世代が、生徒から指導者となって入会していることが生徒時代から全て確認できます。私も幼少よりピアノで育ちましたが、もちろんピティナでのコンクール記録が残っています。これらのデータを全社員が分析、活用できるのがうちの強みの一つです。
堀様:私は、各拠点の活動の活性化も担当しています。会員一人ひとりの指導生徒数や、イベント参加人数などを逐一見ては、取り組みが弱いと感じた地区に提案をするなどしています。必ず毎日開いて、いろいろ検索をかけて眺めていますね。
このClaris FileMakerの扱いやすさもあると思います。私がデータベースを構築することはあまりありませんが、ほかのスタッフが使っているのを眺めているだけでも、いわゆる取説なしにできてしまう感じです。現代表の福田が会員データのプラットフォームとしてこれを採用したのは先見の明があったと思います。
全員DXキャンペーンをきっかけに、DS.INSIGHTも全社員で活用!
渡久地様:ヤフーのDS.INSIGHTも、まずは代表の福田が個人で導入しました。その後、「全員DXキャンペーン」で値段はそのままに100ライセンス使えることになったので、それをきっかけに全社員で使ってみようと。
小規模な組織ということもあり、専任のマーケティング担当は置かず、各事業の担当者が広報から実務までをトータルで対応しています。それぞれの担当が独自に、広報やマーケティングの施策を担っているのが現状です。
そのため活用方法や使い方のルールを事前に決めることもなく、最初に基本的な使い方の研修会だけをセッティングして、あとは各自が好き勝手自由に使うことにしました。もともと各自でデータを分析し、情報を共有しあう文化が根付いていたので、何か面白い切り口を発見したら、その事業の関係者にシェアするという動きが自然とはじまりました。
直感的に使えるから、気軽に企画が生まれていった
渡久地様:DS.INSIGHTが直感的な操作で使えることもよかった点です。基本的な機能しか活用しきれていないということもありますが、特に使い方が難しいと感じることもないため、普段から使っているデータ分析のプラットフォームの延長線上にDS.INSIGHTが加わったという感じで、導入のために何か特別なことが必要だったという印象はありませんでした。DS.INSIGHTは分析結果がビジュアライズされていて、ぱっと直感的に情報が入ってくる感じも良かったです。
事業の紹介で登場した「ピアノ曲事典」では導入後すぐに気軽な企画が生まれました。DS.INSIGHTで、「ピアノ曲」がどんなキーワードと検索されているかを改めて分析してみると、具体的な曲名や作曲者より、「かっこいい」「面白い」などの印象、「クリスマス」など時節のキーワードと一緒に検索されることがわかりました。それらを担当者に共有したところ、「クリスマスに聴きたいピアノ曲〇選」という記事を作ってみようとなり、すぐに実行に移されました。
会費値上げを乗り越えるための新サービスもデータの後押しで誕生
有門様:DS.INSIGHTから生まれた企画はもう一つあります。こちらも渡久地が「ピアノ教室」を調べ、ニーズ別に整理したことからスタートしました。DS.INSIGHTの共起キーワードは同時に調べられたほかのキーワードがわかるのですが、このように趣味や教室探しなどニーズで分け、会員のメインであるピアノ教室主宰者のニーズに着目しました。
すると、「確定申告」や「規約 例」など経営的なものが出現していたのです。我々は指導スキル的なところをリッチにサポートしていますが、経営的なお悩みやニーズがやはり大きいのだな、ということを二人でディスカッションし、確認しました。さらにこの内容を、メールで皆が見られる状態で共有しました。
堀様:このメールを見て動いたのが私です。2021年はサービスを拡充して会費値上げの影響を最小化するというミッションがあります。そこで、ピアノ指導者の独立やプロフェッショナル化のサポートもできたらと考えていました。さらに、メガバンク出身かつ音楽大学に勤務歴のある経営にも音楽にも詳しいアドバイザーとのつながりもでき、ここから何かできないか?を考えていたところでした。
メールから、まさにこの方向にあった「ピアノ教室 確定申告」「ピアノ教室 規約 例」といった課題が目で見て明確にわかりました。ニーズの受け皿は早急に整えるべきです。そこで、経営に特化したアドバイザーによる無料相談サービスを開始しました。
思い付いた人、気が付いた人が必要な人に結果を気軽にパスしていく
- DS.INSIGHTの活用で苦労したことはありましたか?
渡久地様:比較的小規模な組織ということもあり、各自がゼネラリストとして様々なことを並行して進めながらマーケティングの施策を行っています。DS.INSIGHTの活用で苦労するというよりは、マーケティングに対してどれだけ時間を割くことができるか、使える時間の中での配分を決めるところに苦労しているのが現実的なところでしょうか。
DS,INSIGHTを社内で活用していくにあたっては、あえて専任の担当者は置かず、思い付いた人、気が付いた人がまず自分で試してみて、その結果を必要な人に気軽にパスするやり方が、私たちの組織の文化に馴染むのではと感じました。
社員1人が使える時間は限られているので、組織全体で情報を共有・補完しあう方が力をより発揮できると考えています。分析して正解を見つける、というよりも、こんな面白い結果がありましたよ、と結論がない段階でも早めに情報を共有して、あとは情報を受け取った側が自分なりに解釈して自由に活用するというスタイルです。
今回のように、マーケティングによる施策で結果が出た事実が積み重なってくることで、さらにマーケティングのために時間を確保しよう、という意思決定にもつながってくると思います。
2021年もDS.INSIGHTを活用してサービスを拡充予定!
- 最後にメッセージをお願いします。なんでも大丈夫なコーナーです。
渡久地様:2021年は、新しいテクノロジーも積極的に活用して、多くの方の学習の継続や演奏機会の提供に貢献したいです。演奏動画を用いた企画も次々にスタートしています。ピティナのコンクールには大切にすべき歴史と伝統がありますが、そこに新しい要素も加えて、演奏する方だけでなく、オリンピックのように応援する楽しみなども提供し、より多くの人にコンクールを知ってもらいたいです。
堀様:当協会主催コンクールの最上位部門にあたる「特級ファイナル」はピアニストの登竜門ともいわれており、2021年も8月19日にサントリーホールで開催予定です。
2020年はコロナ禍の影響で直接来場してご観賞いただける方を制限する必要がありましたが、ライブ配信に例年以上の力を注いだ結果、当日はホールの収容人数を超える8500人以上の方にライブでご視聴いただき、その後公開した動画も12万回以上再生されました。
ライブ配信を通してこれまでコンクールのことを知らなかった多くの方へ周知が進んだ実感があります。DS.INSIGHTを活用し、どのようなキーワードでより多くの方に興味を持っていただけるかのポイントも見ていきたいです。
有門様:どこの業界も同じだと思いますが、コロナでオンライン化が加速しました。我々もテーマを設定したZoom座談会をほぼ毎週開催し、全国各地の普段は会うことがないピアノ指導者同士が交流することによって会員の活性化につながりました。テーマについて話し合いたい指導者たちがディスカッションし励ましあう場を作れたのです。
テーマは、担当者の経験や見聞きしている情報から直感的に決めていましたが、DS.INSIGHTで見ると、大人の初心者などが検索されていて「ピアノ 独学」というのも出てくるという発見がありました。検索されている、みんなが本当に知りたいことがわかるのです。そこで、これらに対し指導者としてどうアプローチするかをテーマに設定した会もおこないました。今年も全国でこの取り組みを続け、ブラッシュアップしていきたいです。