活用事例:ネスレ日本株式会社
活用事例
ネスレ日本株式会社
DS.ANALYSISをブランド横断のオウンドメディア戦略構築に活用
ネスレ日本株式会社
ネスレ日本は世界最大の食品飲料企業であるネスレの日本法人。日本ではコーヒーなどの飲料をはじめ、菓子、調味料や栄養補助食品、ペットフードなど幅広い事業を展開。今回はネスレ日本株式会社マーケティング&コミュニケーションズ本部 デジタルマーケティング部 ユニットリーダーの中通康太様が、2022年1月のYahoo! JAPAN DATA CONFERENCE 2022に登壇されたセッションを再構成しています。
中通康太様
ターゲットの解像度を上げたい。それが出発点でした
- 普段の業務について教えてください
中通様:デジタルマーケティング部に所属していまして、この部署では特定の商品ブランドではなく、全社横断的なデジタル活用の促進や各商品ブランドへのサポート等を行うことがミッションです。具体的にはネスレアミューズという対顧客向けのオウンドメディアを運用しておりSNSアカウントやWEBサイトを保有しています。このサイトには各ブランドのコンテンツとともに、ブランドコンテンツへのアクセスを増やすためのブランド横断コンテンツや各種集客コンテンツがあります。こういったコンテンツを活用した集客と、戦略設計などを担当しています。
- 現在のネスレアミューズの課題や理想はどのようなものでしょうか?
中通様:非常に大きな話となりますが、ネスレ日本にとって最適なオウンドメディア活用とはなにか、その最適解を作ることが理想であり、ある種のミッションでもあります。これは今日・明日にできるということではなく、半永久的に解を探していくことだと考えています。
単純なデモグラ情報やアクセス情報も重要ですが、我々が本当に理解したいお客様のFACTは、誰が何をしに何を思い、何を求めてサイトに来ているのか、どうすればそのお客様の課題を弊社が解決でき、ひいては商品を買っていただけるのか、ということです。なので、潜在顧客を含めてそういったターゲットの解像度を上げるべく、自社外のデータも含めて考えたいということで、DS.ANALYSISを活用することになりました。
データから発見したブランド間の共通要素
- まず今回のDS.ANALYSISの活用内容をお聞かせください
中通様:主には「興味関心比較」、ヤフーのデータを活用してユーザー像を具体化する「ペルソナ作成」、「クラスタリング」の3つでした。
- 今回はどのような基本方針をもって取り組まれましたか?
中通様:ふたつありまして、ひとつ目が各商品ブランド間の共通要素の発見。ふたつ目はネスレ日本が提供する価値と、その共感要素の把握です。
まずひとつ目ですが、これは検索するという行為そのものが、なにを意味するのか、という根源的な問いから始まりまして(笑)。
DS.ANALYSISの分析からまず分かったことは、ブランドによってお客さまのサイトに求めるものはまったく違う、当たり前のことかもしれませんが、このことがよく分かりました。たとえば、弊社の「ミロ」という商品は、ファミリー向けということもあって、成長期の子供あるいは大人には、どんな栄養素が必要かといったテーマへの関心が高い。一方で別の商品では定期的に購入をしたいという需要から通販への志向がきわめて強い。といった具合に、違いが可視化できました。
商品ブランド間の共通要素の発見について、ひとつ紹介すると、弊社はペットフードの取り扱いもありまして、このペットフードとコーヒーメーカーの共通要素は何があるのか、という問いがありました。これは、正直、かなり難しい問題ですよね。DS.ANALYSISの分析結果が下の図となります。
ブランドロイヤリティー向上のために
- ふたつ目のネスレ日本が提供する価値と共感要素とは、どのようなものでしょうか?
中通様:これはネスレのいわゆるブランド・プロミスの中に、栄養や健康といったワードがあるんですね。この「栄養・健康」といったワードに関して、ターゲットはどのように受け止めているのか。DS.ANALYSISの分析としては二十代の女性では「肌の美しさ・美容」といったものが求められ、若い男性層ではたとえば「筋トレ・筋肉増強」などもでてきます。中高年の方では健康そのものに関心がシフトしていく傾向があります。
結局、コピーライティングの世界とも共通するような話ですが、コミュニケーションを設計するときに、「ファクト」「メリット」「ベネフィット」どの軸に訴求重点を置くか。私たちの事業分野からは圧倒的に強烈なファクトは、なかなかむずかしいという面もあるので、なるべく顧客の興味関心、ひいてはインサイトにアタックする「ベネフィット」を訴求する必要がある。そう考えたときに、各ターゲットの共感要素の分析は非常に有益だと考えています。
「FACTとしての理解」がもつ価値
- 今回の振り返りと今後に向けてお聞かせください
中通様:今回のDS.ANALYSIS活用による自社外行動分析も含めて、オウンドメディア活用戦略の構築に活用し、これをコミュニケーション設計やコンテンツ制作に活かしていく。そのPDCAをまわしていくというのが、今回の試みであり、今後も継続していきます。DS.ANALYSIS活用による自社外行動分析に関しては、さきほどもお話しした「新しい発見」と同時に「FACTとしての理解」という面も非常に有益でした。
- 私たちヤフーに求められるものとしてはデータによる「新しい発見」が非常に多いのですが、「FACTとしての理解」についてくわしくお聞かせください
中通様:これは簡単に言ってしまえば、なんとなく「こうなんじゃないかなぁ」といった事象をハッキリさせる、文字通り「FACT」化することです。
- 「FACTとしての理解」がもたらすメリットには、どのようなものがあるのでしようか?
中通様:ふたつあると考えていて、ひとつ目は単純にミスリーディングの防止。間違った理解からは間違った結論しかでません。
ふたつ目は推進力の強化。スタッフの多くが「多分、こうなんじゃないかなぁ」と思っていることは、けっこう存在すると思います。たとえば、ターゲット分析でも、過去の知見などから「こういう人がウチのお客さんには多そう」といったものが存在します。これらをデータの裏付けのあるFACTにするか、曖昧のままにしておくか、この違いが実は非常に大きい。
なにが大きいかというと、FACT化すると「リソースの無駄遣い」を抑制できます。
「多分、こうなんじゃないかなぁ」と、みんなが考えていても、みんなの歴史背景や役割は異なるので、ちょっとした差分が出ます。するとどこかで噛み合わなくなり、後戻りが発生する。また、「想定」で会話をすると論点の分岐が多くなるので、その分、検討事項が多くなり、そこに会議時間や資料作成などが費やされがちです。つまりリソースが分散されてしまう。FACT化するとこれがなくなる訳です。全員がFACTを共有して、共通認識をもって、その先へ向けて同じベクトルで活動する。これは組織がパワーを発揮する上で非常に大きいと考えています。
- それは、データ活用を考えるうえで、非常に重要な視点ですよね。最後にさきほどの「共通要素としてのDIYやリフォーム関心が特徴的」のお話もそうなのですが、実はデータの分析結果はいろいろなものがでてきます。そのなかから、なにを選び取るか、データへの接し方やデータをどう考えるかということをお聞かせください
中通様:最後に非常にむずかしい質問ですね(笑)。データは結局、数字でしかない訳ですが、私たちが見ている数字は顧客やユーザーの行動の結果です。そして、そこには必ず行動を引き起こす動機やモチベーションが存在します。この動機やモチベーションが次の施策を検討するにあたりとても重要です。モチベーションAがBに変化した時、行動の結果=数字も変わるのか?ということはモチベーションCと行動Yは関係性があるのか?・・・といった具合に、データを見ながら、その数字が意味することを考え続けることが大切だと考えています。
-貴重なお話をありがとうございました