導入事例:順天堂大学
導入事例
順天堂大学
医療分野でのビッグデータ活用
DS.INSIGHTで患者や医療者への理解を深める
エリア分析データ教育教育・研究機関
順天堂大学医学部総合診療科では、研究・診療・教育と大学病院における取り組みにおいてDS.INSIGHTを活用されています。今回は、教授として総合診療科をリードされている内藤様にお話を伺いました。
順天堂大学 内藤俊夫様
- 総合診療科における内藤様の取り組みについてお聞かせください。
順天堂大学総合診療科は、患者さんが判断しにくい症状、いわゆる「どこを受診すればいいのかわからない」状態から適切な医療につなげるための窓口として、およそ20年前にできました。
私自身は総合診療科のトップとして診療と教育と研究の3つをリードする立場にあります。まず診療に関しては、入院と外来のチームを俯瞰しリーダーシップをとってコントロールするといったことをおこなっています。例えばCOVID-19のような流行の病に対しては科を越えて診療の指揮をすることもあります。
教育に関しては、医学部生や研修医に対しての総合診療的な教育にあたっています。これからの総合診療を担う人材の育成だけでなく、総合大学として看護学部やリハビリテーションなどの学生に対しても教育の一環として授業をすることもあります。
研究においては、総合診療科学講座という講座の研究を全般的に指揮しますので、研究対象として感染症をやりたい人、生活習慣病をやりたい人など研究対象は多岐にわたりますが、それらの研究を直接指揮したり、研究の指導者に対して直接指導をするといったこともあります。また、予算獲得などこれら研究をサポートするための対応をおこなっています。
順天堂大学総合診療科は、患者さんが判断しにくい症状、いわゆる「どこを受診すればいいのかわからない」状態から適切な医療につなげるための窓口として、およそ20年前にできました。
私自身は総合診療科のトップとして診療と教育と研究の3つをリードする立場にあります。まず診療に関しては、入院と外来のチームを俯瞰しリーダーシップをとってコントロールするといったことをおこなっています。例えばCOVID-19のような流行の病に対しては科を越えて診療の指揮をすることもあります。
教育に関しては、医学部生や研修医に対しての総合診療的な教育にあたっています。これからの総合診療を担う人材の育成だけでなく、総合大学として看護学部やリハビリテーションなどの学生に対しても教育の一環として授業をすることもあります。
研究においては、総合診療科学講座という講座の研究を全般的に指揮しますので、研究対象として感染症をやりたい人、生活習慣病をやりたい人など研究対象は多岐にわたりますが、それらの研究を直接指揮したり、研究の指導者に対して直接指導をするといったこともあります。また、予算獲得などこれら研究をサポートするための対応をおこなっています。
ビッグデータで総合診療の強みを生かす
- DS.INSIGHTを導入したきっかけについて教えてください。
長年、研究をしてきている中で疑問に思っていることがありました。それは、日本での多くの研究がいまだにアンケートベースであるということです。例えばある1つの病院でアンケートを取りましたというのがどれだけ普遍的に世界に役立つかというところに非常に疑問を持っていました。現在ではもはやビッグデータが当たり前に活用される中、数百人にアンケートを取りましたではなかなか根拠として乏しいというところと、われわれが普段接している一部の地域の患者さんだけのデータだけで一般化して良いものかどうかという疑問がどうしてもありました。
また、ビッグデータ、特にナショナルデータベースなどを使うこともできるのですが、基本的にはレセプトデータ情報(受診した患者さんがどんな診療を受けたかという情報)です。このデータを扱う上でまず1つ決定的な問題は、処方した内容や検査など受診した病気の人のデータしかないということです。患者さんがどう感じたとか、結果良かったのか良くなかったのかということまでは分かりません。
もう一つの問題は、データを扱うまでの手間がかかるということです。レセプトデータは厚労省に申請すればもらうことができて研究に使えるのですが、その手間の割にはまだまだ問題も多く、例えば結婚しているかどうかであるとか住んでいる地域でさえも入っていません。もちろんレセプトデータでも利用できる部分もありますが、この5年間程研究をする中で不満があったのも事実です。この状況の中で一人の大学院生と話をしているときにネットの情報を使えると面白いのではないかと話題にすることがありました。その時にちょうどDS.INSIGHTを知ることができ、もうこれだという感じで導入に至りました。
- 実際にはどのように使われているのでしょうか
私の下にはいくつかの専門があって、感染症や生活習慣病、スポーツ医学をやっている部門なんかもあります。そういった部門の担当それぞれにまずはDS.INSIGHTのIDを付与して、「こんなものがあるので、ちょっと使ってみて何かアイデアを出して」ということを最初にしました。
そうした中でスポーツ部門の人間が、例えばスポーツ関連ではこんなことをやってみましたというのを出してきてくれるので、それに関しては私のほうで意見をフィードバックして、みたいなことをしています。
私自身の取り組みとして性感染症関連の研究をしていますが、DS.INSIGHTを使ってみた結果を他の部門の人に示したりもしています。
「こんなふうに使えるのか」「じゃあ自分たちだったら何をするのか」というようなやりとりを繰り返しおこなっている形です。
- DS.INSIGHTが活用できそうな研究はありますか?
1つは性感染症関連です。性感染症の患者さんにアンケートを取っても本音を得ることはなかなか難しかったりします。これは当然のことだとは思いますが、やはり患者さんの本音の気持ちや、病院に来てもらえない人たちが何を考えているのかを知りたいと思っています。DS.INSIGHTであれば人々の興味関心を知ることができる点で患者さんの気持ちの理解につながるのではないかとすごく期待していますし、われわれとしての宝が眠っているのかなと思います。
もう1つは、経年的なデータが見られますので、特にCOVID-19の影響がどのように起こっているのかということを見るのにすごく良いのではと考えています。例えば旅行やスポーツなど人々の行動にCOVID-19がどのように影響を及ぼしたのか、といったことなどをさまざまな視点で捉えることができるのではないかと考えています。
COVID-19については多くの研究者がさまざまな発表をしていますが、本当のところは誰もわかっていませんし、海外の発表を日本に当てはめることもできないと考えています。日本ではなぜ患者数を海外よりも抑えることができたのか、など、そういったヒントもデータの中には隠れているのではないかと思います。Placeの位置情報データも活用しながらうまく使っていきたいと思っています。
長年、研究をしてきている中で疑問に思っていることがありました。それは、日本での多くの研究がいまだにアンケートベースであるということです。例えばある1つの病院でアンケートを取りましたというのがどれだけ普遍的に世界に役立つかというところに非常に疑問を持っていました。現在ではもはやビッグデータが当たり前に活用される中、数百人にアンケートを取りましたではなかなか根拠として乏しいというところと、われわれが普段接している一部の地域の患者さんだけのデータだけで一般化して良いものかどうかという疑問がどうしてもありました。
また、ビッグデータ、特にナショナルデータベースなどを使うこともできるのですが、基本的にはレセプトデータ情報(受診した患者さんがどんな診療を受けたかという情報)です。このデータを扱う上でまず1つ決定的な問題は、処方した内容や検査など受診した病気の人のデータしかないということです。患者さんがどう感じたとか、結果良かったのか良くなかったのかということまでは分かりません。
もう一つの問題は、データを扱うまでの手間がかかるということです。レセプトデータは厚労省に申請すればもらうことができて研究に使えるのですが、その手間の割にはまだまだ問題も多く、例えば結婚しているかどうかであるとか住んでいる地域でさえも入っていません。もちろんレセプトデータでも利用できる部分もありますが、この5年間程研究をする中で不満があったのも事実です。この状況の中で一人の大学院生と話をしているときにネットの情報を使えると面白いのではないかと話題にすることがありました。その時にちょうどDS.INSIGHTを知ることができ、もうこれだという感じで導入に至りました。
- 実際にはどのように使われているのでしょうか
私の下にはいくつかの専門があって、感染症や生活習慣病、スポーツ医学をやっている部門なんかもあります。そういった部門の担当それぞれにまずはDS.INSIGHTのIDを付与して、「こんなものがあるので、ちょっと使ってみて何かアイデアを出して」ということを最初にしました。
そうした中でスポーツ部門の人間が、例えばスポーツ関連ではこんなことをやってみましたというのを出してきてくれるので、それに関しては私のほうで意見をフィードバックして、みたいなことをしています。
私自身の取り組みとして性感染症関連の研究をしていますが、DS.INSIGHTを使ってみた結果を他の部門の人に示したりもしています。
「こんなふうに使えるのか」「じゃあ自分たちだったら何をするのか」というようなやりとりを繰り返しおこなっている形です。
- DS.INSIGHTが活用できそうな研究はありますか?
1つは性感染症関連です。性感染症の患者さんにアンケートを取っても本音を得ることはなかなか難しかったりします。これは当然のことだとは思いますが、やはり患者さんの本音の気持ちや、病院に来てもらえない人たちが何を考えているのかを知りたいと思っています。DS.INSIGHTであれば人々の興味関心を知ることができる点で患者さんの気持ちの理解につながるのではないかとすごく期待していますし、われわれとしての宝が眠っているのかなと思います。
もう1つは、経年的なデータが見られますので、特にCOVID-19の影響がどのように起こっているのかということを見るのにすごく良いのではと考えています。例えば旅行やスポーツなど人々の行動にCOVID-19がどのように影響を及ぼしたのか、といったことなどをさまざまな視点で捉えることができるのではないかと考えています。
COVID-19については多くの研究者がさまざまな発表をしていますが、本当のところは誰もわかっていませんし、海外の発表を日本に当てはめることもできないと考えています。日本ではなぜ患者数を海外よりも抑えることができたのか、など、そういったヒントもデータの中には隠れているのではないかと思います。Placeの位置情報データも活用しながらうまく使っていきたいと思っています。
<研究資料抜粋>
面白そうだけで終わらせない、医療におけるデータ活用
- 多くの方が利用される中で効果を感じられる部分はありましたか?
まず1つ目はDS.INSIGHTのインターフェースがかなり使いやすく、本当に1時間もあれば1つの研究のアイデアがわくのが非常に良いです。
われわれが何かの研究をするときというのは、データを抽出して解析してグラフを作って初めてそこで「ああ、これは面白そうだ」というのがわかるのですが、だいたいこれをやろうと取り組みを始めてからグラフを最初に目にするまでに半年ぐらいはかかるのです。その前にはもちろん倫理委員会も通さなければいけません。その段階で「これって結局のところあまり面白くないな」ということがわかって、また半年かけてやり直しというようなことが往々にしてあります。研究の手法として面白いものだけを取り出してグラフにして発表するというのは慎重に進めなければならない部分もありますが、本当に5分・10分で比較や分析が可能になったことで着想を得るためのスピード感が上がった気がします。
2つ目は実際に一般の方がどう考えているかを知ることができる点です。病院に来る人、特に東京の私立の大学病院に来る人というのはある意味限られた人なので、北海道から沖縄までの一般の人々がどう考えたかという多様なデータを見ることができるという点はすごく役立つと思っています。ただし、われわれの研究を社会に還元し国民の健康に寄与できるものにするためにも、面白い発見がありましただけで終わらせないように進めていくことも大事なポイントであると考えています。
- 今後、医療の現場においてどのような活用が期待できそうでしょうか?
ワクチンですかね。例えば子宮頸がんのワクチンでもいろいろなタイプのものがあり、新しいものも出てくるのですが、そういう新しいワクチンが人々に認知されているのかどうかということなどがわかると思います。そういった部分では実際のところ、どの薬がどれぐらい使われそうかという推測ができるようになると考えています。もちろん「検索=使われている」という話ではないと思いますが、患者さんの興味や、あるいは医療者の興味がトレンドとしてわかるということは実際役立つことがあると思います。
本当は打つべきものが患者さんにうまく伝わっていないとか、あるいは、せっかく国が接種の補助金を出し始めたのに、実際には検索されていないとか。患者さんへの啓発が必要ですし、ワクチンに対して前向きな気持ちを持ってもらうためにも人々のワクチンへのイメージや認知されている内容を知っておくということが医療に関わる者としても大事かと思っています。
- 最後に今後の活用における展望をお願いします。
DS.INSIGHTは利用していて面白いので、それが1番大事かなというふうに思います。今までのデータベース研究では申請書類を書くのに半年、データをもらって解析するのにまた半年でとても胃が痛い思いで続けてきていましたが、今回は皆でワイワイガヤガヤとやることができて、それだけでも導入した価値があったのかなというふうに思っています。あとは、やはりこういった体験を医学部生など若い人たちにもしてもらいたいと思います。若い人たちというのは、新しいことや他とは違ったことをやっている話が好きですので、例えば私たちの教育にVRを取り入れたりすると、全くやる気が変わるのです。こういった「新しい取り組みをやっています」というのを見せることがまずは大事だと思います。今もいろいろな学部・学年に授業をしていますが、実際に授業の中で「DS.INSIGHTを使うと、こんなことができるんだよ」という話もしています。分析の手段・道具としてこういうものがあるということを知っておいてもらうことで、将来、異なる分野に行ったとしても、その分野でまた新しい発想が生まれてくるのではないかと期待しています。
- 貴重なお話ありがとうございました!
まず1つ目はDS.INSIGHTのインターフェースがかなり使いやすく、本当に1時間もあれば1つの研究のアイデアがわくのが非常に良いです。
われわれが何かの研究をするときというのは、データを抽出して解析してグラフを作って初めてそこで「ああ、これは面白そうだ」というのがわかるのですが、だいたいこれをやろうと取り組みを始めてからグラフを最初に目にするまでに半年ぐらいはかかるのです。その前にはもちろん倫理委員会も通さなければいけません。その段階で「これって結局のところあまり面白くないな」ということがわかって、また半年かけてやり直しというようなことが往々にしてあります。研究の手法として面白いものだけを取り出してグラフにして発表するというのは慎重に進めなければならない部分もありますが、本当に5分・10分で比較や分析が可能になったことで着想を得るためのスピード感が上がった気がします。
2つ目は実際に一般の方がどう考えているかを知ることができる点です。病院に来る人、特に東京の私立の大学病院に来る人というのはある意味限られた人なので、北海道から沖縄までの一般の人々がどう考えたかという多様なデータを見ることができるという点はすごく役立つと思っています。ただし、われわれの研究を社会に還元し国民の健康に寄与できるものにするためにも、面白い発見がありましただけで終わらせないように進めていくことも大事なポイントであると考えています。
- 今後、医療の現場においてどのような活用が期待できそうでしょうか?
ワクチンですかね。例えば子宮頸がんのワクチンでもいろいろなタイプのものがあり、新しいものも出てくるのですが、そういう新しいワクチンが人々に認知されているのかどうかということなどがわかると思います。そういった部分では実際のところ、どの薬がどれぐらい使われそうかという推測ができるようになると考えています。もちろん「検索=使われている」という話ではないと思いますが、患者さんの興味や、あるいは医療者の興味がトレンドとしてわかるということは実際役立つことがあると思います。
本当は打つべきものが患者さんにうまく伝わっていないとか、あるいは、せっかく国が接種の補助金を出し始めたのに、実際には検索されていないとか。患者さんへの啓発が必要ですし、ワクチンに対して前向きな気持ちを持ってもらうためにも人々のワクチンへのイメージや認知されている内容を知っておくということが医療に関わる者としても大事かと思っています。
- 最後に今後の活用における展望をお願いします。
DS.INSIGHTは利用していて面白いので、それが1番大事かなというふうに思います。今までのデータベース研究では申請書類を書くのに半年、データをもらって解析するのにまた半年でとても胃が痛い思いで続けてきていましたが、今回は皆でワイワイガヤガヤとやることができて、それだけでも導入した価値があったのかなというふうに思っています。あとは、やはりこういった体験を医学部生など若い人たちにもしてもらいたいと思います。若い人たちというのは、新しいことや他とは違ったことをやっている話が好きですので、例えば私たちの教育にVRを取り入れたりすると、全くやる気が変わるのです。こういった「新しい取り組みをやっています」というのを見せることがまずは大事だと思います。今もいろいろな学部・学年に授業をしていますが、実際に授業の中で「DS.INSIGHTを使うと、こんなことができるんだよ」という話もしています。分析の手段・道具としてこういうものがあるということを知っておいてもらうことで、将来、異なる分野に行ったとしても、その分野でまた新しい発想が生まれてくるのではないかと期待しています。
- 貴重なお話ありがとうございました!
※本記事の内容は公開日時点の情報です。