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宇都宮ライトレールによって外出機会増!位置情報とYahoo! JAPAN各種サービスデータを組み合わせた分析事例を紹介!
- 事例・分析レポート
[アナリスト:古川 泰地]
背景と目的
宇都宮ライトレールの運行開始は、地域経済の活性化に向けた重要なステップとなっています。特に、宇都宮市の公式ウェブサイトでも言及されている「外出機会の増加」は、開業による効果として期待されている重要な要素です。この「外出機会の増加」に焦点を当て、今回は位置情報と Yahoo! JAPAN各種サービスデータを組み合わせて、宇都宮ライトレールの効果を分析しました。分析方法
分析対象期間は2022年と2023年の9月から12月までとし、この間の外出率を比較しました。また、今回は宇都宮ライトレール沿線の住民とその他の宇都宮市民の比較分析を行いました。ここで言及する宇都宮ライトレール沿線の住民とは、各駅から徒歩10分圏内に住む住民と定義しました。外出率は以下の式によって算出されます。
分析結果
外出率の増加宇都宮ライトレール沿線の市民とその他地域の市民を比較した2022年から2023年にかけての外出率増減は以下の通りです。
2022年外出率 | 2023年外出率 | 外出率増減 | |
宇都宮ライトレール沿線 | 39.1% | 41.0% | +1.9% |
その他 | 32.9% | 33.9% | +1.0% |
外出率は沿線地域で2022年に対して2023年には1.9%増加し、その他の地域では1.0%の増加にとどまりました。これらの情報から推察すると、宇都宮ライトレールの開業により市民の外出機会が増えたと考えられます。では、どのようなユーザーが宇都宮ライトレールの効果を強く受けているのでしょうか。これを Yahoo! JAPAN各種サービスデータと組み合わせて詳しく調査していきましょう。
年代別外出率
Yahoo! JAPAN各種サービスIDに紐づく年齢を用いて、年代別の外出率の増減を確認してみます。
年代 | 宇都宮ライトレール沿線 | その他地域 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
2022年 外出率(%) |
2023年 外出率(%) |
増減率 (%) |
2022年 外出率(%) |
2023年 外出率(%) |
増減率 (%) |
|
20代以下 | 54.2 | 56.2 | +2.0 | 51.5 | 52.9 | +1.4 |
30代 | 35.7 | 37.5 | +1.8 | 33.2 | 34.4 | +1.2 |
40代 | 32.0 | 34.1 | +2.1 | 30.7 | 32.5 | +1.8 |
50代 | 36.5 | 38.1 | +1.6 | 33.4 | 34.6 | +1.2 |
60代 | 32.1 | 33.4 | +1.3 | 28.1 | 28.2 | +0.1 |
70代以上 | 22.7 | 25.3 | +2.6 | 18.4 | 18.6 | +0.2 |
全年代にわたり、宇都宮ライトレール沿線地域の住民の方が外出率の増加が顕著です。特に70代以上の方で増加率が高いことが分かります。これは宇都宮ライトレールと宇都宮市による高齢者外出支援事業の相乗効果や、バリアフリーが行き届いているLRT車両が、足腰の弱い高齢者にとって移動時のハードルが低くなったことが要因と考えられそうです。
子供の年代別外出率
次に、 Yahoo! JAPAN各種サービスの利用傾向から推定した子供を持つ人達の子供の年代を用いて、子の年代別の外出率の増減を確認してみます。なお子供の年代は2023年末時点の推定データを使用しています。
子供の年代 | 宇都宮ライトレール沿線 | その他地域 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
2022年 外出率(%) |
2023年 外出率(%) |
増減率 (%) |
2022年 外出率(%) |
2023年 外出率(%) |
増減率 (%) |
|
子供なし | 50.3 | 52.6 | +2.3 | 47.1 | 48.7 | +1.6 |
未就学児(0歳) | 34.6 | 32.5 | -2.1 | 30.6 | 30.7 | +0.1 |
未就学児(1~3歳) | 25.1 | 27.8 | +2.7 | 25.4 | 27.0 | +1.5 |
未就学児(4~6歳) | 23.7 | 27.6 | +3.9 | 29.4 | 30.5 | +1.1 |
小学生 | 31.2 | 33.1 | +1.9 | 30.6 | 32.4 | +1.8 |
中学生 | 35.3 | 38.3 | +3.0 | 31.9 | 34.2 | +2.3 |
高校生以上 | 32.1 | 33.5 | +1.4 | 27.0 | 27.4 | +0.4 |
0歳の未就学児を持つユーザーを除いて、全体的にその他地域よりも沿線地域に住むユーザーの外出率の増加が見られます。特に未就学児(4~6歳)を持つユーザーの増加率が3.9%と最も高くなりました。鉄道は小さな子供の興味を引く乗り物であると同時に、高齢者の外出機会増加と同様の観点から、バリアフリーの観点から、子供を連れたり、ベビーカーを押したりしながら移動するユーザーにとって移動のハードルが下がったことが要因と考えられそうです。
まとめ
分析結果から、宇都宮ライトレールの導入は、沿線地域に住む市民の外出機会の向上に貢献していること、特に高齢者と小さな子供を持つユーザーに対してより大きな影響を与えていることが示されました。具体的には、高齢者と小さな子供を持つユーザーは、いずれも移動時のハードルが高かったと考えられますが、宇都宮ライトレールの開業によって、バリアフリーが行き届いていることから、移動がしやすくなったと考えられそうです。今回の分析で使用したデータに限らず、位置情報と検索データなどLINEヤフーの膨大なデータを組み合わせて活用することで、さらに深い洞察が得られる可能性があります。今後もヤフー・データソリューションをよろしくお願いいたします。
※今回公開したデータを含め、ヤフー・データソリューションは、お客さまのデータを統計データとしたうえでデータの可視化や分析結果をご提供するサービスであり、個人を識別できるデータ(パーソナルデータ)については、お客さまから新たに同意をいただかない限り外部に提供することはありません。
※本記事の内容は公開日時点の情報です。
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