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検索データから見る「食」のおひとり様ニーズ
- 事例・分析レポート
[データマーケティング本部 棚原郷太]
こんにちは。ヤフー・データソリューションの棚原です。
2023年も終わりが近づき、寒さとともに年の瀬を感じる場面が増えてきましたね。
様々な年末年始の過ごし方があるかと思いますが、忘新年会やクリスマス、お正月に温かいものを誰かと一緒に口にする機会が増える時期になるのではないでしょうか。
私自身は、家族の仕事の都合があり、年末は一人で過ごす時間が多くなりそうなのですが、
私と同じような境遇に置かれている方も一定数いらっしゃると思います。
本レポートでは、秋から冬にかけて関心の高まる「鍋」に関する検索と、その中で見つかったおひとり様ニーズをテーマとして、DS.INSIGHTの統計検索データを用いた分析事例を紹介いたします。
■「鍋」の検索推移と気温
「鍋」の直近4年間の検索推移を示した週次グラフが以下です。この4年の中では2020年が年間検索ボリュームの多い年でしたが、直近と比較すると以下のようになります。
この段階では、このトレンドとなる理由がはっきりしませんが、温まる食事として「鍋」が想起され興味を持たれていると仮定すると、2020年との気温の違いがニーズ変化の要因となっている可能性が考えられます。
特に今年(2023年)は秋口から寒暖差が激しい印象がありますが、気象庁にて公開されている都内の実際の平均気温は以下です。
2020年
2023年(下図)と比べると低く、月平均で17.5℃の気温です。
2023年
出典:気象庁 https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/monthly_s1.php?prec_no=44&block_no=47662&year=2022&month=&day=&view=a2
■考察
五感で感じられる物事は本能的・無意識な行動変容の引き金を引く1つの条件となり得ますが、これらのデータのみで見ると、平均気温が低いほど温まりたいという志向が増し、「鍋」の興味が高まると言えるのではないでしょうか。■鍋テーマや具材に関するニーズ
ここまで鍋に興味を持つきっかけの一つとして気温について触れましたが、検索者の趣向やニーズを深堀するために、鍋の具材について着目してみます。
ボリューム順で、「鍋 具材」が含まれる検索ワードを直近1年で並べ替えたものが以下です。
これらが、一般的な鍋のイメージそのものに近いと思われます。
ここから少し掘り下げて、男女の特徴度(※)別にみると、以下のように違いが現れます。
※特徴度とは
特定のキーワードが、その属性において、全体と比較した場合にどれくらい検索される傾向が高いかを表しています。
男性特徴度上位15位
また、女性の場合は以下です。
全体でもボリューム上位にあった豆乳鍋関連のワードが複数出現しました。
検索ボリューム自体は少ないものの、チーズカレーや白湯、豆乳、ほうとう鍋といった変わり種への興味も伺えます。
■鍋の具材についての考察
男性は切り方・順番といったワードと共に、具材そのものが含まれる検索が顕著に表れ、素材を楽しむ傾向が見えます。一方で、女性はテーマへの関心が高く、鶏・野菜中心でヘルシーな具材が好まれているようです。また、一人鍋というワードが男性ランキングの方から出現し、冒頭のおひとり様ニーズが鍋に対してあることが示唆されています。
■おひとり様ニーズの深堀
前述の鍋を起点とした分析で、食事におひとり様ニーズがあることが示されましたが、範囲をもう少し広げて、「一人用」と共起するワードから深堀をします。
「一人用 ○○」と一緒に検索されているワード※直近1年(2022/11/28〜2023/12/03)
上記の中で食関連のワードのうち、ボリュームの多いのがおせち、土鍋、ドミノピザですがその属性を可視化すると以下の通りです。
一方で、直近おせちの関心の高まりが観測され、引き続きニーズがあることを示しています。
複数人で食べる前提のおせちや土鍋に対して、特に直近検索が伸びている「おせち 一人用」に着目し過去に何を検索していたのかを参考に考察します。
■「おせち 一人用」検索者の時系列キーワード(前後検索)
一見、データの偏りがあるように感じますが、おせち自体が年末から正月のみに関心を集める物事になるため、その前に何に関心を持っていたのかを見ていくイメージとなります。更に細かく見る形となりますが、「宅配弁当 高齢者向け ランキング」を検索する理由となり得る、質問・困りごとに絞った時系列キーワードが以下です。
手前の検索行動なども踏まえて考えられるイメージとして、別居する介護が必要な親に対して食事を気にかけている、また、正月はおせちを楽しんでもらいたいといったような人物像があるのではないでしょうか。
■おわりに
社会の変化に伴うライフスタイルの多様化から、様々な世代において食のニーズもこれから更に複雑に捉えづらくなっていくことが予想されます。モノが溢れる中でユーザの心を掴むためには、そのインサイトを理解する必要がありますが、検索データはその1つの手段となり得ます。企画・マーケティング、小売りや物販の現場に近い皆様に是非参考にして頂ければ幸いです。
ヤフー・データソリューションでは、今後も分析に役立てていただける調査レポートの発信をしていきます。今後ともヤフー・データソリューションをよろしくお願いいたします。
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