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住民の関心を検索データ・位置情報データから調査する 〜自治体で活用できるデータ分析〜
- 事例・分析レポート
[アナリスト:筒井 麻雅]
データ活用の重要性が至る所で取り上げられる昨今。都道府県や市区町村の自治体においても、「EBPM」という言葉が登場しているように、政策の合理的検討のためにデータによるエビデンスが求められています。
施策に国民の意思を適切に反映させる、変化の早い現代社会へ柔軟に対応する、そのような目的のためにデータ活用をしていきたいと思う一方、なかなか難しいと感じている自治体のご担当者様も多いのではないでしょうか。
よくある悩みとして、
・変化の早い社会をリアルタイムに把握する手段がない
・複数のトピックに跨った網羅的な調査が難しい
・どうやってデータを集め、分析をしていけばよいか方法が思いつかない
などが多く聞かれます。
そこで、今回1つの解決方法としてご紹介したいのが、
ヤフーのデータを活用して「簡易的に住民の関心を調査する」方法です。
■ヤフーのデータで住民の関心を調査する
ヤフーのデータを活用して、簡易的に住民の関心を調査する方法とはどういったものでしょうか。具体的には、ヤフーの検索データと位置情報データを使います。以上を駆使することで、市区町村単位など特定のエリアの居住者は、他のエリアと比較してどんなトピックに対し特徴的に関心を持っているのか?などを分析できるのです。
■他の市区町村と比較して分析する 〜兵庫県を例に〜
実際に、兵庫県を例に挙げて見てみたいと思います。兵庫県内の市区町村を対象に、「子育ての悩み」「資産運用」「社会問題」などの複数のカテゴリを設定して、各カテゴリにおける関心度を集計してランキング形式で可視化してみました。いくつかのカテゴリで、どの市区町村が最も関心度が高いか見てみましょう。
集計期間:2022年2月〜2023年2月
使用ツール:tableau(以下同様)
(カテゴリのスコアは、兵庫県内における関心度平均値を50とした時の相対的なスコアです。)
まず「子育ての悩み」カテゴリをみると、明石市が最も関心度が高いことがわかります。
明石市は子育て支援の施策で有名なため、関心を持つ居住者が多いのも納得と言えますね。
次に「資産運用」カテゴリを見てみると、芦屋市が頭一つ飛び抜け、ついで神戸市灘区、西宮市がランキング上位になっていますね。特に芦屋市と西宮市は高級住宅街があり、資産運用に関心を持つような富裕層も多いと考えられます。
以上のように、ヤフーのデータを使うことで、「このカテゴリに対する関心を持っているのはどの地域の人なのか?」を抽出して分析することが可能です。
■自分の市区町村のカテゴリ別関心度を分析する 〜芦屋市を深堀り〜
特定の市区町村に焦点を当てて、「このエリアの居住者はどんなカテゴリに対して特徴的に関心を持っているのか」を分析することもできます。
先ほど取り上げた芦屋市を例にして、カテゴリ別の関心度を分析してみましょう。
上の図は、芦屋市内におけるカテゴリごとの関心度をランキング形式で可視化したものです。先ほどは他の市と比べて「資産運用」への関心度が高かった芦屋市ですが、芦屋市内のみに焦点を絞ったランキングをみると、実は「移住」カテゴリの関心が最も高いことが分かります。
なぜ芦屋市は移住カテゴリへの関心が高いのでしょうか?その理由も、データから仮説を立てることが可能です。
■検索キーワードを見てみると......
芦屋市の人々が調べた移住カテゴリの検索キーワードを見てみると、「田舎暮らし 物件」「スローライフ」の他に、海外移住や別荘などのワードがあることが分かります。ここから、田舎での生活への関心だけではなく、裕福なユーザーが別荘購入や海外の生活に関心を寄せているのでは......といった仮説が考えられます。
■子育てのカテゴリを掘り下げて分析する 〜明石市を深堀り〜
ここまでご紹介してきたような複数のカテゴリに対する関心の分析に加えて、一つのカテゴリのみに注目し、より掘り下げた分析をしていくこともできます。
たとえば、子育てを例に挙げてみましょう。
子育てと一口に言っても話題はさまざまあり、自治体で取り組んでいる子育て支援なども保育や医療、出産など細かなトピックに分かれていますよね。
子育てのうち、具体的に居住者の関心がどの話題にあるのかを把握できれば、施策の優先度付けなどにも活用できそうです。
兵庫県を例に「子育て」カテゴリを細かなトピックに分けて、同じ方法で関心度を算出してみました。下記の図は、「子育ての悩み」「小学校」「中学校」などに細分化したトピックについて、兵庫県明石市内での関心度をランキング形式で可視化したものです。
先ほどは大きく「子育て」というカテゴリで関心度トップだった明石市は、子育て関係の話題の中でも子育ての悩み、幼稚園、妊娠・出産など、妊娠〜幼児子育て時期に対する関心が高いことが見てとれます。
■市区町村同士で比べてみると......
明石市以外の市区町村ではどういった傾向があるのか、気になりますね。
傾向の違いを一目で把握できるように、トピックを絞り込んでレーダーチャートの形で可視化してみましょう。
明石市と神戸市灘区の関心度を比較してみると、関心の傾向に大きな違いがあることが分かります。明石は出産〜幼児子育て時期に対するトピックに対して関心度が高い一方、神戸市灘区は幼稚園を含め、小学校〜大学などの教育系のトピックに大きく関心があることが見て取れますね。
灘区には神戸大学があったり、おとなりの東灘区に灘高校あったりと、まわりに名高い教育機関がある環境です。そういった環境が居住者の関心にも影響しているのかもしれません。
このように、エリアごとを比較して特色の違いを分析することもできます。
こういった比較をすることで、「自分の担当するエリアと同じくらい関心度が高いエリアを探して、施策を参考にする」「自分の担当するエリアよりも関心度が高いエリアを見つけて、情報連携をする」などにも活用できるのではないでしょうか。
■謝辞
本分析は、各都道府県や市区町村の政策企画の一助になるよう、開発を進めた結果を一部紹介したものです。 開発にあたり、実際に政策企画に関与されている方々の意見をいただくため、山口県庁様に山口県下のデータ分析結果を確認いただきました。この場を借りて深く感謝を申し上げるとともに、以下に山口県庁様のコメントを紹介させていただきます。
■山口県庁様コメント
山口県では、サービスデザイン思考に基づき、効果的なサービスを企画・立案をするため
令和4年度からビッグデータ利活用ツールであるヤフー社の「DS.INSIGHT」の利用を開始しており、
観光部門を始め、庁内の多岐にわたる部門で活用されています。
しかし、一方で、本ツールの利用に興味はあるけれど「どうやって使ったらいいの?」
「どのような仮説やキーワードで検索したらいいの?」など、操作について難しく感じる職員も一定数いました。
そのため、今回、ヤフー社が行政業務に関わる検索キーワードを事前にカテゴリー化することで、
比較や企画等の情報収集、仮説を立てやすくする「レポート」を開発していると伺いモニターに参加させて頂くこととしました。
今後とも、キーワード・関連ワード等の更なる拡張・拡充など機能の一層の充実に期待をしております。
■終わりに
今回ご紹介したようなデータ分析手法を用いることで、住民のニーズや悩み、課題の把握といった定量的な基礎調査を実施することが可能です。こういった分析に興味のある方は、ヤフー・データソリューションまでぜひお問合せください。
ヤフー・データソリューションでは、今後も分析に役立てていただける調査レポートの発信をしていきます。今後ともヤフー・データソリューションをよろしくお願いいたします。
※今回公開したデータを含め、ヤフー・データソリューションは、お客さまのデータを統計データとしたうえでデータの可視化や分析結果をご提供するサービスであり、個人を識別できるデータ (パーソナルデータ) については、お客さまから新たに同意をいただかない限り外部に提供することはありません。
※本記事の内容は公開日時点の情報です。
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