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トラベル宿泊予約データによる分析レポート
- 事例・分析レポート
[アナリスト:森 琢郎]
はじめに
新型コロナウイルスが流行して3年ほど経った現在、年末年始も新規感染者数が大きく伸びるなど、今なお猛威を振るっています。ウイルスに対しての理解や対策が浸透してきているとはいえ、このような状況下では、旅行に対する気持ちも不安定な状態が続いているかと思います。
しかし、確実に戻りつつある旅行需要を捉えるべく
・旅行者の属性やニーズを知りたい
・旅行までの行動について知りたい
・旅に関わる商品の最適な訴求タイミングを知りたい
といった、課題感をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回のレポートでは、ヤフートラベルの宿泊予約のデータをベースに、ユーザーがどのような旅行計画を立てどのように行動しているのかを紐解いていき、上記課題に対しての解決の可能性を探っていきます。
■宿泊予約から何が見える?
宿泊予約のデータには、下記に挙げるような様々な要素があります。
また、これまでのレポートで多数扱ってきた 検索キーワード では、どのような興味関心を持っているかは分かりますが、意思決定の正確なタイミングを測ることは難しいです。
一方、宿泊予約のデータは、ユーザーの行動タイミングをより正確に測ることができるデータになります。
今回は、予約日とチェックインの差に着目し、
・ユーザーはどのくらい前から予定を立てるか
・ユーザーグループによって行動特性に差があるか
・予約日前後はどのような行動(ジャーニー分析)を取っているか
について見ていこうと思います。
■宿泊予約から見えてくるユーザー像
旅行計画の中で、宿泊予約をした予約日というのは、旅行の日時と場所が確定したということでもあるため、計画の大筋が定まった時点の目安としてみることができます。
そのため、チェックイン日から予約した日が遠いほど前々から計画を立てていたことが、逆に近ければ突発的に泊まる必要が発生したり、急に思い立って旅行計画を立てたりしたことが伺えます。
このことから、前者は計画性の高いユーザ群であり、後者は計画の柔軟性が高いユーザ群であるという仮説が立てられそうです。
では、この期間とヤフーのユーザ属性の関連性から仮説を検証していきたいと思います。
まずは、大元となる予約日に関するデータの傾向を見てみましょう。
1年間の推計宿泊人数との関係性を表したのが次のグラフです。
グラフを見ると多くのユーザが当日・前日といった宿泊日の直近に予約していることが見て取れます。また、予約者の80%近くがチェックインの1ヶ月前までに予約していることも分かります。
次に平均宿泊料金との関係性を表したのが以下のグラフです。
予約日が近いほど平均宿泊金額が少なく、遠くなるほど宿泊金額が多くなっています。つまり、宿泊金額が高い宿ほど、前々から予定を立てる傾向があるということが分かります。
では次に、ヤフーの属性データを用いて予約日にどのような傾向が現れるかを見ていきましょう。
予約日毎に特徴的な職業を表したのが次の表になります。
※ 特徴的:他の属性に比べ、同期間の人数割合が多い状態
推定職業別のユーザー層の予約日傾向
コンサルタントやマーケティングといった職業のユーザが、予約日からチェックインまでの期間が比較的短いといった結果が出ました。これらの職業は、趣味として行く旅行という側面だけでなく、出張やホテルでのリモートワークといった業務的な利用も考えられそうです。
また、学生や主婦といったユーザー層は、友達や家族といった複数人での旅行などが想起され、
教育・医療・介護などの職業は、ビジネス目的の出張などは少ないのではと考えられ、また急な休日を取りにくい職業とも考えられることから、長期的な旅行計画を立てる傾向にあるではと推察されます。
宿泊予約データの他の要素を用いて、もう少し深掘りしてみましょう。
ここでは、職業ごとに平均宿泊人数と特徴的な宿泊施設の種別を表しています。
推定職業別のユーザー層の宿泊人数と宿泊施設傾向
コンサルタントやマーケティングといった職業のユーザ層は、1~2人で出張やリモートワークに使われやすい、ビジネスホテルに泊まっている結果が出てきました。
学生は、2人程でビジネスホテルという、価格面を気にしながら複数人での宿泊を、
主婦、教育・医療関係者は、2~3人でリゾートホテルや旅館といった複数人でゆったりと過ごせる宿泊施設を選んでいることが分かりました。
別の角度の分析として、興味関心との関係性も見てみましょう。
推定興味関心別のユーザー層の予約日と宿泊施設傾向
ゲーム好きのユーザー群は、全般的にビジネスホテルの利用が特徴的に表れていますが、瞬発性や柔軟性が必要になりやすいスポーツゲーム好きは宿泊の直前に予約するのに対して、計画性が必要になりやすいシミュレーションゲーム好きのユーザはかなり前から予定を立てているといった違いが見られます。
また、旅行好きのユーザ群は、様々な宿泊施設を選んでいることからそれぞれの旅行プランをしっかりと計画して楽しんでいる様子が伺えます。
ここまでをまとめると、
チェックイン日から予約日が近いほど
・ビジネスユースが想起される利用
・瞬発性や柔軟性が必要になりやすい対象への興味関心
など、計画の柔軟性が想起される特性が紐づいていることが分かりました。
また、チェックイン日から予約日が遠いほど
・複数人での旅行
・リゾートホテルや旅館など混雑が考えられ、価格帯も高い旅行
・計画性が必要になりやすい対象への興味関心
など、旅行に対して計画性が求められる特性が紐づいていることが見えてきました。
このように、宿泊予約データの分析から予約日との日数に関する仮説を後押しする結果を得られたのではないでしょうか。
■予約前後のオンライン行動から見える特徴
ここまで、予約日が計画に対するユーザ特徴を表していそうなことを確認してきました。
この特徴を踏まえたユーザ層に関して、旅行の予定や準備をどのように進めているかをヤフーの様々なデータを用いて簡単に見てみましょう。
予約日前後の特徴的な検索キーワードを抽出して分析することで、旅行の目的やニーズなどが見えてきます。チェックイン日と予約日が比較的近い特徴を示していた「コンサルタント、金融、不動産専門職」の当日〜2日前に予約しているユーザの中で、特に求人情報に関心が高いユーザ層を対象として、特徴的な検索キーワードを表したものが下記になります。
求人情報に関心が高いコンサルタント等ユーザー層の予約日前後の検索行動(ジャーニー分析)
このユーザ層は、就職活動の流れで宿泊しているといったことが特徴的に見えてきます。
9日前くらいから転職活動に関するキーワードが現れ、それと並行するように、ビジネスファッション、交通手段といった流れで検討している様子が出てきています。宿泊施設に関しては、予約の4日前ほどから検討を始めています。
また、宿泊の直前で荷物をどこで預けられるかという検索キーワードも見えていることから、荷物を持ち運びたくないというニーズも見て取れます。
また、ヤフーショッピングの予約前後の閲覧行動を見ると、旅行に関する用品の検討タイミングが見えてきます。
チェックイン日と予約日が比較的遠い特徴を示していた「旅行好き」の1ヶ月半以上前に予約する層を対象として、旅行用品カテゴリの商品に対しての閲覧行動を時系列に並べたものです。
旅行好きユーザー層の予約日前後の購買検討行動(ジャーニー分析)
また、アクティビティに関する製品からは、マリンスポーツとウィンタースポーツの異なる傾向も見えてきます。
旅行好きユーザー層の予約日前後の購買検討行動(マリンスポーツとウィンタースポーツ)
ウィンタースポーツは宿泊施設の予約前に検討をしており、マリンスポーツは、サーフィン関連の製品は予約の少し前に、その他の製品は予約後に検討をしている様子が見られます。
このことから、意思決定の順番がウィンタースポーツやサーフィンの場合、道具から場所という順番であり、
その他マリンスポーツの場合、場所から道具という順番に検討しているという傾向が確認できました。
■おわりに
このレポートでは、
・宿泊予約のデータから見えてくるユーザ像の違い
・予約を基点にしたジャーニーから見える旅行計画や準備の流れ、商品検討のタイミングの一例
について紹介しました。
ヤフートラベルをはじめヤフーの多様なデータを用いると、様々な切り口のユーザ像の定義が可能になり、確度の高い意思決定のタイミングを含んだカスタマージャーニーの作成が可能になることを感じて頂けたのではないでしょうか。
ヤフー・データソリューションでは、今後も分析に役立てていただける調査レポートの発信をしていきます。今後ともヤフー・データソリューションをよろしくお願いいたします。
※今回公開したデータを含め、ヤフー・データソリューションは、お客さまのデータを統計データとしたうえでデータの可視化や分析結果をご提供するサービスであり、個人を識別できるデータ (パーソナルデータ) については、お客さまから新たに同意をいただかない限り外部に提供することはありません。
※本記事の内容は公開日時点の情報です。
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