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改名により認知度はどのように広がっていくのか

事例・分析レポート

[アナリスト:坂本 遼]

こんにちは、データアナリストの坂本遼です。

ショッピング施設やアトラクション施設などは、リニューアルに伴い改名を行うことがあります。
改名発表直後は新しい名前になじめなくて、つい改名前の名前で呼んでしまう人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、改名によって新しい名がどのように認知されていくかを、時間経過による広がり方と地域の広がり方の2つの観点で分析してみました。

結果としては、近郊での知名度を持つ施設の場合は施設に近いほど認知度が高く、認知する時期も早いことが分かりました。
また、その施設に関する大きな話題となるニュースは認知度に大きな影響を与えていることも分かりました。

それでは、分析内容を詳しく見ていきましょう。

ヤフーの保有する検索データを使用して、旧名と新名の検索人数を月別・地域別に集計しました。
今回調査対象にした施設は次の2つです。

・ グランベリーパーク(旧名はグランベリーモール)
・ 福岡PayPayドーム(旧名は福岡 ヤフオク!ドーム)

また、ここで新名検索者、旧名検索者、認知度を、以下のように定義しました。
・ 新名検索者:新名を検索した人。新しい名前を知っている
・ 旧名検索者:旧名を検索したが、新名は検索していない人。新しい名前を知らないと思われる
・ 認知度:新名検索者、旧名検索者を合わせた検索者のうち、新名検索者の割合

1. グランベリーパーク

グランベリーパークとは、東京都町田市にあるアウトレット複合商業施設です。
当初は「グランベリーモール」という名前でしたが、2017~2019年に休業して再開発を行い、2019年11月に「グランベリーパーク」として再スタートを切りました。

地元からも愛されているのか、休日は多くの人でにぎわっています。

1.1. 認知の時間経過による広がり

「グランベリーパーク」「グランベリーモール」を含む検索を行った人数を、月別に見ていきましょう。
「グランベリーパーク」という名前に変えることを発表した2018年3月から、新名の検索者が多くなる時期までを、全国及び地域別に見ていきます。
1.1.1. 全国
まずは日本全体での検索人数の推移について確認します。

グランベリーパーク/モール検索人数の推移(月別)


2019年11月に「まちびらき」が行われた影響からか、その前後の期間では検索人数がとても多くなっています。
それ以前は工事のため休業中であったからか、ほとんど検索されていないように見えます。

「まちびらき」期間を含めるとグラフがつぶれてしまって見にくいため、右図で2018年3月~2019年7月を拡大して見てみました。

これを見ると新名発表直後はほとんど認知されていませんが、2018年8月に新名検索者が急増し、9月以降は新名検索者と旧名検索者が同程度になります。

半年ほど新名検索者と旧名検索者が半々の状況でしたが、2019年3月以降に新名の検索者が徐々に増え始めており、認知が広がっている様子がうかがえました。

1.1.1.1. 2018年8月について

ほとんど検索されていなかったのに、2018年8月に突然新名検索者が増えています。
実はこの月は、グランベリーパークにスヌーピーミュージアムを入れることが公表された月でした。

(参考:https://www.tokyu.co.jp/image/news/pdf/20180816.pdf

そこで、以下のような仮説を立てて、検証を行いました。

• 仮説
 o 2018年8月にスヌーピーミュージアムを入れることを発表したため、認知度が伸びた
• 検証方法
 o 2018年8月に検索されたグランベリーパークを含む検索は、スヌーピーミュージアムに関する検索が多かったのか確認

検索するときは、「グランベリーパーク ○○」といった形で、別の用語と一緒に検索することがよくあります。

もし○○にスヌーピーミュージアム関係の用語が入っている検索が多ければ、スヌーピーミュージアムへの関心でグランベリーパークの検索を行っていると考えることができます。

今回は2018年8月にグランベリーパークと一緒に検索されている用語(○○の部分)のランキングを作成してみました。

グランベリーパークと一緒に検索された用語


ランキングを見るとスヌーピーが7位にランクインしており、スヌーピーミュージアムの関心を一定程度集めていた様子がうかがえます。

また、テナントが2位につけていますが、この時に発表されているテナントはスヌーピーミュージアムのみでした。

テナント自体への興味かスヌーピーミュージアムへの興味かの区別はつきませんが、テナントとしてスヌーピーミュージアムを入れることを発表したことは、グランベリーパークへの関心を高め、認知度にポジティブな影響を与えていたと考えられます。

次に、認知が広がってきた期間である2018年3月~2019年7月について、地域別に検索人数の推移を確認していきましょう。

1.1.2. 町田市
町田市


まずはグランベリーパークの所在地である町田市の検索者数の推移です。

グラフでは少し潰れていますが、新名を発表した当初から新名検索者が100人程度と一定数おり、一部の人は認知している様子がうかがえます。

2018年8月には新名の検索者数が大きく上昇し、それ以降は新名検索者の方が多い傾向にあります。

全国の旧名検索者と新名検索者が2018年9月~2019年2月まで拮抗していることから、地元での認知は早いと言えそうです。

地元では、当初から一定数の人には認知されており、2018年8月以降は過半数の人に認知されている様子がうかがえました。

1.1.3. 世田谷区
世田谷区


町田市から30kmほど離れている世田谷区では、2018年7月までほとんど新名検索者がおらず、認知されていない様子がうかがえます。

2018年8月に検索者数が大きく上昇し、それ以降は新名検索者と旧名検索者が拮抗しています。

当初はほとんど認知されていませんでしたが、2018年8月~9月に半数近い人に認知され、安定して過半数に認知されるようになったのは2019年の1月以降と考えられます。

1.1.4. 藤沢市
藤沢市


藤沢市も町田市から30kmほど離れていますが、新名検索者が旧名検索者を上回るのは2019年6月と、世田谷区より半年ほど遅くなっています。

町田市から同じような距離にもかかわらず世田谷区と藤沢市で認知に差が出ている原因としては、通っている鉄道の違いが考えられます。

実はグランベリーパークの再開発には、東急電鉄が深く関わっています。

(参考:https://www.tokyu.co.jp/image/news/pdf/180322.pdf

世田谷区は東急電鉄の路線が通っている一方藤沢市は通っていないため、世田谷区の方が宣伝・広告などにより新名を目にする人が多かったのではないかと推測することができます。

他にも南町田まで高速道路で行ける世田谷区の方が藤沢市より自動車でのアクセスが良いといったことも考えられます。

1.1.5. 認知度
地域別新名検索者の割合


地域別に認知度(新名の検索者数の割合)の推移を比較してみました。

ここでは先ほど取り上げた地域の他に、グランベリーパークのすぐ近くにあり町田市に隣接している大和市と、距離や鉄道の影響を受けないような十分遠い地域の代表として大阪府を加えています。

全体として認知度が大きく伸びたのは、2018年8月と2019年11月でした。

2018年8月の伸びは全期間通しても一番の伸びであり、スヌーピーミュージアムの影響が大きい様子がうかがえます。

2019年11月は「まちびらき」の行われた月であり、オープン時にはどの地域でも90%以上の認知度が達成されていた様子がうかがえます。

(参考:https://www.atpress.ne.jp/releases/183668/att_183668_1.pdf

その他の時期は認知度の上昇が緩やかなことから、大きなイベントは飛躍的に認知度を上げる効果があると言えそうです。

より詳細に見ていきますと、2019年10月頃までの間、地域により20%程度認知度に差があることが分かります。

新名発表当初では、地元町田市は20~30%と一定程度の認知が見られましたが、そのほかの地域はほとんど認知されていないことが分かります。

2018年8月以降は、町田市や大和市といった地元では60~80%ほど認知されている一方で、距離がある地域では50%前後の認知にとどまっていることが分かります。

また、大阪府は認知度が高いように見えますが、もともと知らない人が多く旧名を検索する人が少ないからと考えられます。
検索者数自体もとても少なかったため、そもそも施設自体への関心があまり持たれていない様子でした。

施設近郊の傾向として、地元ほど認知度が高く、また認知する時期も早い様子が見られました。

1.2. 認知の地域的な広がり

次に、地域ごとの認知度の差をより具体的に見ていくため、東京都(島嶼部を除く)と神奈川県の認知度のヒートマップを作成しました。

下の図は、色が濃いほど認知されている割合が高く、白いほど認知されている割合が低いことを示しています。



図の中央付近にある町田市の南端にグランベリーパークがあります。

2018年7月の時点では町田市周辺の一部地域でしか認知されていませんが、2018年8月を境に周辺地域が赤くなっており、この時期に飛躍的に認知度が伸びたことが分かります。

また、8月以降は町田市から遠くなるほど色が薄くなっており、距離が遠いほど認知度が低いことも視覚的に分かります。

その後2019年8月頃までは2018年8月と比べて色のついている地域はあまり変わっておらず、その色のみ濃くなっています。

このことから2018年8月~2019年8月の一年間では、地域的な広がりはあまり見られなかったが2018年8月に認知度が上昇した地域では認知度が着実に上がっている様子が見られました。

「まちびらき」が行われた2019年11月にはほとんどの地域で非常に高い認知度が達成されており、東京都、神奈川県の範囲では「まちびらき」までに新名が十分認知されることができたと言えそうです。

2. 福岡PayPayドーム

2つ目の例として、福岡PayPayドーム(略称:PayPayドーム)について見ていきます。

PayPayドームは福岡県福岡市中央区にある野球場であり、プロ野球球団の福岡ソフトバンクホークスの本拠地となっています。

元々は「福岡 ヤフオク!ドーム」という名称でしたが、2019年11月1日に「福岡PayPayドーム」に変更することを発表し、翌年2月29日から名称が変わりました。

(参考:https://paypay.ne.jp/notice/20191101/02/

プロ野球の球場という全国的な知名度を持っていると思われる施設では、どのような認知度の広がり方をしているのでしょうか?

グランベリーパークとの違いにも注目しながら確認してみましょう。

2.1. 認知の時間経過による広がり

2.1.1. 全国
まずは日本全体での検索人数の推移について確認します。

PayPayドーム/ヤフオクドーム検索人数の推移


2019年10月から新名を検索している人がいることが分かりますが、これは名称を変更するニュースが10月に報じられたためと考えられます。

(参考:https://www.softbankhawks.co.jp/news/detail/9418.html

2020年2~4月に旧名検索者が急速に減少して新名検索者の方が多くなっており、この時期に認知が広まったと考えられます。

※ちなみに2019年の旧名の検索と比べると2020年の新名の検索人数はとても少ないですが、これはプロ野球の試合が新型コロナウイルスの影響で無観客開催となったため、PayPayドームに行く人がいなかったからではないかと考えられます。

次に、新名が検索され始めた2019年10月以降に絞って、地域別に検索人数の推移を確認していきます。

2.1.2. 福岡市中央区
福岡市中央区


まずはPayPayドームのある福岡市中央区の推移です。

意外にも全国の傾向とあまり変わらない様子が見られました。
地元ほど認知度が高かったグランベリーパークとは対照的な傾向ですね。
2.1.3. 北九州市
北九州市


福岡市から70kmほど離れた北九州市の推移です。

こちらも全国の傾向とあまり変わらないですね。
認知度と施設との距離はあまり関係ないのでしょうか。

2.1.4. 東京都
東京都


様々な球団のファンがいそうな東京都の推移を見てみました。

全体的には全国とあまり変わらない傾向ですが、2019年10月、2020年11月の新名検索人数がとても多いことが分かります。

前者については、東京にはニュースに敏感な人が多いため、新名の情報を早くキャッチ出来たのかもしれません。

後者はこの月に開催された日本シリーズがソフトバンク vs 巨人であり、東京を本拠地とする巨人ファンの関心が高まっていたからと推測することができます。

これについて、PayPayドームと一緒に検索された用語のランキングを確認してみました。

PayPayドームと一緒に検索された用語


ランキングを見ると、日本シリーズが5位、野球が9位にランクインしています。

また、座席表、アクセス、ホテルなど観戦目的の用語も上位に見られることから、日本シリーズの影響で新名の検索人数が増えていると考えられます。

2.1.5. 地域別の認知度の推移
地域別新名検索者の割合


地域別に認知度(新名の検索者数の割合)の推移を比較してみました。

ここでは先ほど取り上げた地域の他に、ホークスファンが少なそうな(偏見)広島県を加えています。

2019年10~12月は東京の認知度が他地域より10%ほど高く、情報に敏感な様子がうかがえます。

全国的に知名度の高い施設は、地域差より情報への敏感さの方が認知度への影響が大きいのかもしれません。

また、名称変更前の2020年2月までは地元ほど認知度が低く、逆に名称変更後の2020年3月以降は地元ほど認知度が高い傾向が見られます。

これについては、地元では名称変更前は実際にヤフオクドームを利用する人が多いため新名をあまり使わず、名称変更後は新名の情報が入ってきやすかったり、実際にPayPayドームを使用する人が多いため認知度が高くなるのではないかと推測することができます。

名称変更前の2020年2月までにおいて新名を知らない人が多かったのか、知っていたが検索する必要が無かったかの区別はつきませんが、一貫して地元の認知度が高かったグランベリーパークとはまた違った傾向が見られました。

2.2. 認知の地域的な広がり

認知の地域的な広がりをより具体的に見ていくため、都道府県別、福岡県の市区町村別の2通りで確認してみましょう。

2.2.1. 都道府県単位


名称変更の発表直後の2019年11月は、地元福岡県に近いほど色が薄く、認知度が低い様子が見られます。

西日本ではヤフオクドームの利用者が多いからかもしれません。

名称変更直後の2020年3月は全国的に同じ程度の認知度となり、地域差はあまり見られていません。

2020年10月と11月を比較すると、10月は地域ごとに認知に差がある一方11月は全体的に高い認知度になっており、ソフトバンクホークスが日本シリーズ進出したことが全国的に認知度を高めたのではないかと考えられます。

2.2.2. 福岡県の市区町村単位


福岡県内の認知度の広がりを見てみました。

PayPayドームは福岡県西部にある福岡市中央区の海沿いにあります。

あまり地域差は見られず、全国的に知られている施設においては距離が近いから認知度が高いということは必ずしも言えない様子がうかがえました。


3. 終わりに

今回は近郊での知名度を持つグランベリーパークと全国的な知名度を持つPayPayドームを例に、認知度の広がり方を分析してみました。

前者では施設に近いほど認知度が高く、また認知するタイミングも早い様子が見られました。

鉄道会社による宣伝も認知度にプラスに働いている様子がうかがえましたが、認知度に一番インパクトを与えた要因としては「スヌーピーミュージアムをテナントとして入れる」という注目を集めるニュースではないかと推測できます。

近郊での知名度を持つ施設の場合は、地道な努力に加えて大きな話題になるニュースを打ち出すことが、認知度を高める上で重要なのかもしれません。

一方で全国的な知名度を持ち、改名直前までイベントが行われていた後者の場合は、前者ほどの地域差は見られず、施設周辺では改名までは旧名を、改名後は新名を使うことが多い傾向が見られました。

ただし、日本シリーズの行われたタイミングで全国的に高い認知度を達成していることから、両者とも大きなイベントやニュースが認知度にプラスに働いている様子はうかがえました。

全国的な知名度を持つ施設の場合は、多くの人に新名を使ってもらう機会を作ることが、認知度向上のカギなのかもしれません。

また、このような地域別の認知度の分析は、施設の開発・イベントの開催時やリニューアルの際に、ブランド認知のためのエリアマーケティング戦略の参考にすることもできます。

皆さんの周りでも改名した施設がありましたら、いつから新名を使うようになったか思いを巡らしてみてはいかがでしょうか。
※本記事の内容は公開日時点の情報です。
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