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コロナで現れた京都市観光ルートの大きな変化

レポート

[アナリスト:石川 貴明]

「全国旅行支援」が去年10月から始まったことを受けて「旅行・観光」についての注目が高まっている昨今ですが、皆さんも「全国旅行支援」を利用して旅行・観光に行かれた方が多いと思います。

しかしながら「コロナ」の影響で「旅行・観光に行くなら人が多いところより、なるべく人が少ないスポットに行きたい」と思われる方もいらっしゃったのではないでしょうか?
「観光業界」や「交通業界」の担当者の方は、今までの傾向とは異なるこのような観光動向に対して、どのように対応していけばよいのか悩まれている方も多いと思います。

今回は観光地として有名な「京都市」について「全国旅行支援」が始まった「2022/10/15~2022/11/15」の期間で分析を行い、観光に対する変化について考察していこうと思います。

まず初めに分析を進めるうえで下記2つの仮説を定義しました。

仮説1
● コロナの影響で人々の考え方が変わってきており、コロナ前と比較して滞在する観光スポットや観光ルートにも変化があるのではないか?

仮説2
● 「全国旅行支援」などを受けて「初めて、または久々に京都へ旅行する人」は、「毎年京都へ旅行している人」と比べて観光ルートに違いがあるのではないか?

分析については以下のステップで進めました。
1. ヤフーが取得している位置情報(※)からユーザーの「就業地」「居住地」を推計し、推計結果が京都市から半径約70km以上離れているユーザーを観光客として抽出
2. 宿泊地以外で観光客が滞在した地点を500m単位のエリアごとに集計
3. 観光客ごとに「2」で集計した結果を1日の中でつなげ観光ルートとして集計
4. 観光ルートに対してクラスタリングを実行


仮説1の検証

コロナ前とコロナ後での観光ルートの変化を比較するため、2019年(2019/10/15~2019/11/15)と2022年(2022/10/15~2022/11/15)で観光ルートTop10を可視化してみました(図1、図2)。
線の色がクラスタリングでグループ化された1日の観光ルートを示しており、今回はTop10を表示しているため10個(10色)の観光ルートが表示されています。

図1 2019年の京都市観光ルートTop10

2019年


図2 2022年の京都市観光ルートTop10

2022年


■2019年の観光ルートTop10から無くなったルート
2022年と2019年を比較すると大きく異なる点として、2019年に人気だった2つのルートが無くなっていることに気が付きます(図3)。

図3 2022年と2019年を比較して無くなった観光ルート

2019年


1. 「京都駅周辺」から「京都競馬場」への観光ルート(図3 紫色、緑色)
2019/10/15~2019/11/15は「秋華賞」「菊花賞」「エリザベス女王杯」などGIレースが多く主催されるため、遠くから訪れる人が多くいたようです。コロナ禍に入り人が大勢集まる競馬場などは敬遠する人が増えた結果、2022年度は人気ルートから外れてしまったのかもしれません。
2. 「京都駅、清水寺」から「銀閣寺」への観光ルート(図3 茶色)
2022年の定番観光ルートから外れてしまったようです。しかし2022年の観光ルートTop10以降を見てみると「銀閣寺を含む観光ルート」が何個か出てくるため、「銀閣寺」を含む定番のルートが無くなり複数の観光ルートへ分散された結果、人気Top10から外れてしまったのかもしれません。

■2022年の観光ルートTop10で新しく増えたルート

コロナ前の2019年に比べて新たに出てきた観光ルートは2つです。
1. 「高雄周辺」の観光ルート
「そうだ京都に行こう(https://souda-kyoto.jp/plan/takao/)」などのサイトでも取り上げられており、直行バスが運行されているため混雑などを避けつつ人気のスポットへ行きたい観光客の方のニーズにマッチしたのかもしれません。観光スポット「嵐山高雄パークウェイ」の検索数も2019年に対して2020~2022年は150%に増加しており、コロナ禍で人気になっていることがうかがえます。
2. 「京都駅周辺」から「伏見周辺」の観光ルート
2019年では14位だったものが2022年ではTop10入りしたようです。

■初めて京都観光に来る人に注目!

「貴船神社・鞍馬寺」「寂光院・三千院」などの京都市中心部から離れた人気スポットと「京都駅周辺」や「清水寺」などのスポットが観光ルート(図2の「ピンク色」「灰色」「青色」の観光ルート)として表れている点も注目できそうです。

コロナ前は1日を「貴船神社・鞍馬寺」「寂光院・三千院」のエリアで過ごす方も多かったようですが、去年は「さらに、もう一カ所の観光スポットを訪れよう」と考えている人が多かったようです。

もしかしたら「全国旅行支援」で「初めて京都観光にくる人」は、「複数の観光スポット」を巡回したいという欲求が一般平均よりも高い可能性も考えられそうです。これは仮説2で検証していこうと思います。


検証1のまとめ

コロナ前と去年で比較してみると、変わらず人気の観光ルートがあるものの「高雄周辺」「伏見周辺」など新しい人気の観光ルートも現れてきていることがわかってきました。
また、新たに京都を訪れる観光客は以前よりも1日で複数カ所の観光を行うという傾向がありそうなことがわかりました。

「観光業界」や「交通業界」の方は「高雄」「伏見」エリアを含めて複数の観光エリアを巡るルートを作ってみても面白いのかもしれません。


仮説2の検証

次に仮説2について検証を行います。
「初めてまたは久々に京都へ旅行する人」(新規ユーザー)と「毎年京都へ旅行している人」(京都好きユーザー)の観光ルートを比較するため、過去1年間(2021/10/15~2022/10/14)の間に月次で何回京都市を観光しているか? という条件を付けて、2022年の観光ルートTop10のデータ(図2)を分類してみます。
(例:1月に2日間、8月に3日間京都市へ旅行した人 = 2回)

ただし、過去1年間に月次で5回以上京都市を観光している人は京都好きというよりも出張などで定期的に京都へ訪れている可能性が高いユーザーのため除外しました。
● 集計対象期間を除いた過去1年間の京都市の観光回数が0回 = 新規ユーザー
● 集計対象期間を除いた過去1年間の京都市の観光回数が1回以上4回以下= 京都好きユーザー

■2022年の観光ルートTop10(図2)で「新規ユーザー」の比率が高い観光ルートTop3

1位 「金閣寺」「嵐山」「京都駅周辺」を巡る観光ルート(新規ユーザーが約90%を占める)
金閣寺 嵐山 京都駅


2位 「京都駅周辺」と「寂光院・三千院」を巡る観光ルート(新規ユーザーが約75%を占める)
京都駅 寂光院 三千院


3位 「清水寺・烏丸周辺」と「修学院周辺」を巡る観光ルート(新規ユーザーが約72%を占める)
修学院 清水寺


■2022年の観光ルートTop10(図2)で「京都好きユーザー」の比率が高い観光ルートTop3

1位 「清水寺・烏丸周辺」と「貴船神社・鞍馬寺」を巡る観光ルート(京都好きユーザーが約42%を占める)
清水寺 貴船神社 鞍馬寺


2位 「貴船神社・鞍馬寺周辺」を巡る観光ルート(京都好きユーザーが約40%を占める)
貴船神社 鞍馬寺


3位 「清水寺・烏丸周辺」と「修学院周辺」を巡る観光ルート(京都好きユーザーが約39%を占める)
京都駅 伏見


■2022年の新規ユーザーが好む観光ルート

2022年の「新規ユーザー」が約90%を占める第1位は「金閣寺」「嵐山」「京都駅周辺」を1日で巡る観光ルートでした。「全国旅行支援」を受けて旅行に出かけた「初めてまたは久々に京都へ旅行する人」にとって、この3カ所のエリアを巡るゴールデンルートは重要なようです。

2019年の観光ルートTop20を見てみると「金閣寺」「清水寺」「京都駅周辺」や「嵐山」「伏見稲荷」「京都駅周辺」が人気の順路となっているため観光ルートが変化したのかもしれません。
「新規ユーザー」が約75%を占める第2位は「京都駅周辺」と「寂光院・三千院」を巡る観光ルート、約72%を占める第3位は「清水寺・烏丸周辺」と「修学院周辺」を巡る観光ルートでした。

■2022年の京都好きユーザーが好む観光ルート

2022年の「京都好きユーザー」についても見ていきましょう。
「京都好きユーザー」が約42%を占める第1位は「清水寺・烏丸周辺」と「貴船神社・鞍馬寺」を巡る観光ルートとなり、約40%を占める第2位は「貴船神社・鞍馬寺」を巡る観光ルートとなりました。
毎年京都に訪れているユーザーが紅葉シーズンにおすすめの場所は「貴船神社・鞍馬寺」のようです。

約39%を占めた第3位は「京都駅周辺」と「伏見」を巡る観光ルートとなりました。有名な「伏見稲荷」が含まれていない点は注目すべき点かもしれません。
こちらは2019年の観光ルートTop10(図1)にはなかった観光ルートなので京都好きユーザーが最近おすすめにしたい観光ルートなのかもしれません。

新規ユーザーは複数の観光スポットを巡回していたのか?

検証1でも出てきたもしかしたら「全国旅行支援」で「初めて京都観光にくる人」は、「複数の観光スポット」を巡回したいという欲求が一般平均よりも高い可能性がないか? という問題についても検証してみます。

2022年の観光ルートすべてに対して滞在地点間の移動距離を「新規ユーザー」と「京都好きユーザー」で比べてみました(図4)。

図4 「新規ユーザー」と「京都好きユーザー」の平均移動距離


「新規ユーザー」は「京都好きユーザー」に比べて16%長い距離を観光ルートとしていることがわかりました。念のため有意差があるか確認したところ有意差ありとなりました。
よって「新規ユーザー」は「複数の観光スポット」を巡っている可能性が高いと言えます。

検証2のまとめ

「初めてまたは久々に京都へ旅行する人」(新規ユーザー)と「京都へよく旅行している人」(京都好きユーザー)を比較したところ、異なる旅行順路が人気であることがわかりました。

特に「金閣寺」「嵐山」「京都駅周辺」を巡るゴールデンルートは「新規ユーザー」が行く傾向が強く、京都に不慣れな人に対しての対応が求められそうです。「京都駅周辺」と「伏見エリア」を結ぶ観光ルートは京都好きユーザーがよく行くエリアとなっているため今後期待されるルートとなるかもしれません。

また、新規ユーザーは京都好きユーザーよりも複数の観光スポットを巡る可能性が高いため「もう1カ所行ける場所」を意識してユーザーを誘導してあげるとよさそうです。


まとめ

検証1、検証2の結果からコロナ前後でユーザーの観光ルートに大きな変化があったことがわかりました。

「新規ユーザー」が「京都好きユーザー」に比べて複数の観光スポットをルートに組み込んでいる点も注目です。「観光業界」や「交通業界」の方が着目すべき点を下記にまとめます。着目点を考慮して移動手段や観光案内などで配慮が行えると良いかもしれません。

● 注目する観光ルート

「高雄」と「京都駅周辺」「伏見」

● 京都初心者が巡る観光ルート

「金閣寺」「嵐山」「京都駅周辺」

● 「新規ユーザー」の特徴

「複数の観光スポット」を観光ルートに組み込む


以上が今回「京都市」について観光ルートを分析した結果です。
2023年も1月から「全国旅行支援」が始まっており、まだまだ盛り上がりを見せる「旅行・観光」について「観光業界」や「交通業界」の担当者の方の参考になれば幸いです。

ヤフー・データソリューションでは、今後も分析に役立てていただける調査レポートの発信をしていきます。今後ともヤフー・データソリューションをよろしくお願いいたします。

※ 今回公開したデータを含め、ヤフー・データソリューションは、お客さまのデータを統計データとしたうえでデータの可視化や分析結果をご提供するサービスであり、個人を識別できるデータ (パーソナルデータ) については、お客さまから新たに同意をいただかない限り外部に提供することはありません。
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