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終電検索から見える、街の賑わいと人々の傾向
- 事例・分析レポート
[アナリスト:池本 佳史]
2022年の年末年始は、実に3年ぶりの「行動制限の無い年末年始」として交通機関の利用客が増加したそうです。
私も昨年の忘年会シーズンに終電に乗った際に利用客の多さや車内で居眠りする乗客を見て、世の中が少しずつ以前の日常生活へ回帰していることを実感しました。
実際に人出や検索行動等をデータで確認することは、新たな生活様式における人の流れの把握や、それに対応した施策立案や人員配置の最適化につながります。
そこで、今回はヤフー乗換案内の「終電」検索に着目し、駅周辺の街の賑わいや人々の行動傾向について分析を行いました。
ヤフー乗換案内には、「終電」を検索できる機能が存在しています。「終電」を検索するユーザーは「夜遅くまで外出をしている」と前提を置いた上で、「終電」検索数を駅周辺の賑わいを測る指標として活用したいと思います。また、「終電」検索データを使って「終電」検索の出発点になっている駅やユーザーの特徴分析を行いました。
終電検索の月次推移
※集計対象期間:2020年2月~2022年12月
※参考データ:ヤフー乗換案内および厚生労働省「新規陽性者数の推移(日別)」
※参考データ:ヤフー乗換案内および厚生労働省「新規陽性者数の推移(日別)」
まずは、終電検索者数の推移と新型コロナウィルスの感染状況との関係を見ていきましょう。
終電検索者数は2020年4月および 5月に、1回目の緊急事態宣言下で急激に落ち込んでいることがわかります。
緊急事態宣言の解除とともに終電検索者数は上昇していますが、度重なる緊急事態宣言で終電検索者数は増減を繰り返しています。
4回目の緊急事態宣言が明けると終電検索者数は上昇し、2021年末に一旦のピークを迎えます。
その後、感染力の強いオミクロン株の拡大に伴い、2022年1月にまん延防止等重点措置が実施され、終電検索者数は再び急落しています。
2022年3月、まん延防止等重点措置の終了とともに終電検索者数は増加して行き、2022年5月から横ばいに推移し、2022年末の12月に2度目のピークを迎えています。
12月に終電検索者数が大きく増加するのは、忘年会シーズンであることが一因であると推察されます。
終電検索者数の推移から、コロナ禍以前の日常生活への回帰が見て取れます。
終電検索が多い曜日
※参考データ:ヤフー乗換案内
次に、終電検索者数が多い曜日について考察してみます。
終電検索者数は月曜日から週末に向けて徐々に増加傾向にあり、金曜日と土曜日に特に高くなる傾向にあります。このことから週末に同僚や友人との食事を楽しんだり、イベントなどへ参加したりしていることが伺えます。
また、日曜日は金曜を除く平日(月曜-木曜)とあまり変わらない値であることから、翌日からの仕事に向けて夜遅くまでの外出は控えていることが伺えます。
終電が出発した時間よりも後に終電を検索した状況を「終電逃し」と定義します。
終電逃し人数および全体に占める構成割合も同様に、金曜と土曜日が多くなっています。
また、日曜日と金曜を除く平日(月曜-木曜)を比較すると日曜日の値が高い傾向にあります。
終電検索の多い駅は?
さらに終電について深く分析を行いましょう。終電を逃すシーンに傾向はあるか、駅に着目して検証していきます。
金曜を含む週末(金曜・土曜・日曜)に絞り込んで、終電検索が多い駅を可視化しました。
※集計対象期間:2022年12月の金曜を含む週末(金曜・土曜・日曜)、検索者数が一定値以上存在する駅を表示
参照データ:ヤフー乗換案内 および「国土数値情報(鉄道データ)」(国土交通省)を加工して作成図は東京駅を中心とした路線図で、円の大きさは終電検索者数の多さを表します。つまり終電検索者が多い駅ほど円が大きくなります。
また、画像右の棒グラフは終電検索者の多い駅を上位から表示しています。「新宿」「渋谷」「東京」「池袋」といった東京都内の主要駅が上位に位置していることがわかります。全体的に路線数の多い駅がランクインしています。
図には入りきらなかったのですが「名古屋」「新大阪」「京都」や「横浜」といった新幹線の停車駅も上位に位置します。旅行や出張帰りに現地を楽しむといった方も多いのではないでしょうか。
終電を逃す割合の高い駅は?
終電が出発した時間よりも後に終電を検索した状況を「終電逃し」と定義します。「終電」検索者のうち、「終電逃し」ユーザーの割合を可視化しました。終電を逃す割合は以下のように計算をしています。
終電逃し割合=終電逃しユーザー数/終電検索者数
※集計対象期間:2022年12月の金曜を含む週末(金曜・土曜・日曜)、検索者数が一定値以上存在する駅を表示
※高輪GW・・・高輪ゲートウェイ
参照データ:ヤフー乗換案内および「国土数値情報(鉄道データ)」(国土交通省)を加工して作成※高輪GW・・・高輪ゲートウェイ
図は東京駅を中心とした路線図で、円の色は終電逃し割合の高さを表します。つまり円の色が濃いほど終電逃し割合の高い駅であることがわかります。
また、画像右の棒グラフは終電逃し割合の高い駅を上位から表示しています。
上位に位置している「水道橋」や「後楽園」駅はイベント会場である東京ドームの最寄り駅です。
一つの仮説としてイベント終了後に終電検索をしていると推察できます。
また、図を見ると東京都心から離れた駅にパラパラと赤色が散布していることがわかります。
中でも、「海浜幕張(千葉)」「幕張(千葉)」「古河(茨城)」「本川越(埼玉)」といったこれらの駅は、路線の終着駅もしくは終着駅になり得る駅です。
車内でうっかり寝過ごしてしまい、気づいたら終点駅まで来てしまった姿が想像できます。
終電を逃したユーザーの検索傾向
終電逃しユーザーが終電検索をした直後に検索したキーワードから、終電を逃した人がどのような行動をとっているか見ていきましょう。
終電逃しユーザー群が一般ユーザーよりも特徴的に検索しているキーワードを抽出し、分類しました。キーワードは大きく、「タクシー」「宿泊」「帰宅検討(タクシー以外)」「朝まで」「その他」に関する検索に分類することができました。
延べ検索者数が最も多かったのは、「タクシー」を使った帰宅検討でした(38.5%)。降り立った駅のタクシー乗り場にタクシーが居なかったためタクシー会社へ連絡を検討している姿が想像できます。
次点で「宿泊」に関する検索が27.2%と多く、帰宅を諦めてネットカフェやビジネスホテルなどへ宿泊を選択する人が存在するようです。
また、「ホテル 格安」といった金銭的に優しい宿泊施設を求める検索が多く見られました。終電を逃したといった事態に対してコストをいかに削減できるかといったニーズがあるようです。
タクシー以外の「帰宅検討」は14.5%ほど占めていました。具体的には、「路線図」を検索して別の路線で帰宅できないかの検討や、「深夜バス」での帰宅検討などが推察される検索キーワードが見られました。最後に、開き直って居酒屋やカラオケで「朝まで」過ごす検索行動も見られました。(6.3%)
本分析では、ヤフー乗換案内の「終電」検索に着目して、駅周辺の街の賑わいや「終電」に関する特徴を分析しました。
分析結果から、世の中が少しずつ以前の日常生活へ回帰していることを見て取ることができました。
また、「終電」検索者および「終電逃し」に関して駅やユーザーの傾向を把握することができました。
分析によって顕在化された傾向から次のアクションを検討することが可能です。
例えば、アフターコロナを見据え今後増えていくであろう、「終電」検索者や「終電逃し」ユーザーに向けた施策として、終電を逃しやすい駅に対してタクシーの配車リソースを多く割いたり、周辺宿泊施設のクーポンを発行するなどの施策が検討できそうです。
※今回公開したデータを含め、ヤフー・データソリューションは、お客さまのデータを統計データとしたうえでデータの可視化や分析結果をご提供するサービスであり、個人を識別できるデータ (パーソナルデータ) については、お客さまから新たに同意をいただかない限り外部に提供することはありません
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