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データで見る電動キックボード
~需要の高まりと「保険」市場の可能性~

事例・分析レポート

[アナリスト:松尾 綾]

ここ数年、新しい移動手段として「電動キックボード」を街中でよく見かけるようになりました。シェアサイクルに続く便利な移動手段としての認知が広まってきているように感じます。

そこで、「電動キックボード」についてヤフーが保有するビッグデータを調査してみたところ、確かに年々人々の関心が高まってきているという傾向が見られました。

しかしその一方で、電動キックボードは「車両」にあたることや、自賠責保険の加入義務があるといった自転車とは違ったルールがそこまで認知されていないのでは、といった傾向も併せて見えてきました。

今回、電動キックボードのニーズやそのルールの認知度を検索データを使って分析したレポートをお届けします。

検索から見える「電動キックボード」ニーズの高まり


まずは実際に電動キックボードの関心が高まっているのかを把握するために、2014年から最近までの「電動キックボード」の年間検索数の推移を見てみましょう。

「電動キックボード」年間検索者数の推移

※集計対象期間:2014~2022年(2022年のみ10月まで)

この結果から分かる通り、年々電動キックボードのニーズは高まっているようです。これは街で見かける頻度が高くなったことと一致していそうです。

特に2021年には、電動キックボードによるひき逃げ犯逮捕など重大事故もあったことが影響したのか、関心が一気に高まりました。

また関心の高まりは次の分析データからも見えてきます。「電動キックボード」を含んだ検索キーワードの種類数を、各年ごとに集計してカウントしてみたのが次の表です。

「電動キックボード」を含む検索キーワードのバリエーション

※集計対象期間:2018~2022年(2022年のみ10月まで)
※検索ユーザー数が一定の値を超えたもののみ対象

こちらも年々他のワードと一緒に検索される機会も増えてきており、電動キックボードに関する関心が多様化していっていることがわかります。

では、具体的にどのようなワードと一緒に検索しているのでしょうか?

「電動キックボード」の第二ワード検索数ランキング

※集計対象期間:2018~2022年(2022年のみ10月まで)
※「電動キックボード」を含んだ検索の第二ワードを抽出

2018年から2022年までの1位は常に「公道走行可」。この結果を見ると、電動キックボードが公道で乗れるものであるということは昔から知られているようです。

なお、日本の公道で乗るには、必ずナンバープレートの取得、免許携帯やヘルメット着用、自賠責保険の加入など法律上のルールがいくつかあります。この法律が2022年に入り、免許不要・ヘルメットは任意といくつか緩和されることが告示されましたが、結果からも常に電動キックボードで公道を走るためにはどうしたらいいのか、という情報への関心が高いということがわかりました。

また、特徴的な変化を見せるキーワードとして「免許」への関心が徐々に上位へとあがってきており、さらに緩和される話題が出始めた2021年ころから「免許不要」や「規制緩和」も上がってきています。

規制緩和含め話題に上る機会が増えた電動キックボードの感心は、やはり右肩上がりで上昇を続けている段階にあると言えそうです。

電動キックボードの「保険」に対する認知


電動キックボードへの関心が高まっているということは、上記のデータから見えてきました。さらに電動キックボードに関する関心の内容にも差があることがわかり、特に公道での走行や、免許、規制緩和への関心が近年では高いということも併せてわかりました。

しかし警視庁が開示している「電動キックボード」の発信情報を見ていると、気になる部分が見つかりました。

警視庁ホームページにも記載がある通り、道路交通法上の原動機付自転車(道路運送車両法上の第一種原動機付自転車)に該当するため、自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済(以後、自賠責保険)への加入が義務付けられています。

参考:電動キックボードについて - 警視庁

つまり、自賠責保険への加入義務が必要なのですが、検索数の上位キーワードには現れていないのです。

電動キックボードの保険への関心は実際にどれぐらいなのかを検索数順位をもとに見てみましょう。

「電動キックボード」かつ「保険」を含む検索数の年間順位

※集計対象期間:2018~2022年(2022年のみ10月まで)
※「電動キックボード」かつ「保険」を含んだ検索キーワードを抽出、また検索ユーザー数が一定の値を超えたもののみ対象

抽出結果を見ると、2018年、2019年には電動キックボードを含むキーワードの中に「保険」や「自賠責」を含むものはありませんでしたが、 近年になり電動キックボードのニーズが高まるにつれて検索され出しました。
まだ検索数の上位に挙がっては来ていませんが、保険に関する認知も徐々に広がりつつある段階にあるということがデータから見えてきました。

「保険」に感心がある人はどんな人


保険への加入が必須であるということが認知されてきたためか、年々保険に関連する検索の数も順位も上がってきていることから、全く保険に感心がないわけではないということも見えてきました。

それではさらに、現時点ですでに電動キックボードの保険に関心がある人達(以下「電動キックボード保険興味関心層」)はいったいどのような人たちなのか見てみましょう。

「電動キックボード」と「保険」を含む検索をしているユーザーが、他にどのような検索をする傾向にあるかを、検索キーワードのクラスタリング分析からひも解いてみましょう。

「電動キックボード保険興味関心層」の属性分布

※集計対象期間:2021年11月〜2022年10月


男女の比率は男性の方が多いようです。一般的に男性のほうが乗り物好きが多いイメージですが、電動キックボードにおいてもこの特徴は変わらないのかもしれません。

次に、電動キックボード保険興味関心層がほかに特徴的に検索している検索キーワードの抽出を行い、そのキーワード群にどういう特徴があるのかを把握すためクラスタリング分析を行いました。その結果を見てみましょう。まずはクラスタリング後の検索ユーザー数全体比率をバブルの大きさで表しました(ユーザー数に重複あり)。

「電動キックボード保険興味関心層」の興味関心クラスタリング(バブル)

※集計対象期間:2021年11月〜2022年10月(クラスタ間のユーザー重複あり)

バブルの大きさを見ると、やはりと言いますか電動キックボードと相性のよさそうなバイク関連に興味を持っている人が最も割合として多いクラスタとして抽出されました。また、運転する人の保険のクラスタとも相性が良く、これは主にすでに加入している自賠責保険が電動キックボードにも適用できるのか?といったことを調べている人が多いためとみられます。

まとめ


以上のデータ分析より
・電動キックボードのニーズは確実に高まってきている
・保険が必要であることもようやく認知されだしている
ことがわかりました。

特に電動キックボードに関する保険の認知は全体の1%未満とこれから最も伸びてくるニーズの一つと考えられそうです。

「電動キックボード」関連検索者における「電動キックボード保険」関連検索者の割合

※集計対象期間:2021年11月〜2022年10月

すでに電動キックボードには保険が必要だと知っている人たちは、「おすすめ」「価格」「ナンバー取得」といったキーワードがみられました。つまり、自身で電動キックボードを所有したい人と考える人が今のところは多いようです。

自転車のように多くの人が電動キックボードを所有するようなことがあたり前になると、気軽に保険手続きができる環境の需要が増えそうです。
たとえば、購入先である店頭で一緒に手続きができたり、ECサイトから購入したとしても簡単にネットで保険の加入手続きができる環境は獲得件数の差別化につながるのではないでしょうか。

「情報技術のチカラで、日本をもっと便利に。」をミッションに掲げるYahoo! JAPANでは、今後もビッグデータの持つ力と面白さをお伝えするとともに、ビッグデータの価値を社会に還元するためのさまざまな取り組みを進めていきます。
※本記事の内容は公開日時点の情報です。
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